現在、ソウルではデービッド・ホック二―(David Hockney)の個展が開かれている。2019年3月22日から8月4日まで、ソウル市立美術館(SeMA)と英国のテート・モダン(Tate Modern)が共同企画・開催する「デービッド・ホック二―展」は、アジア地域初となる大規模な個展で、それにふさわしく大々的なPRが行われている。ソウル市立美術館によると、今回の展示ではホックニーが英国のロイヤル・カレッジ・オブ・アート(Royal College of Art)在学中に発表した1950年代から米ロサンゼルスに移住した1960~1970年代、そして2000年代から現在に至るまでの生涯を網羅し、絵画・版画・ドローイング・写真など計133点の多種多様な作品が公開されている。このような貴重な機会を逃すまいと会場には連日観客が詰めかけているが、いったい何が彼らをしてホックニーの作品に熱狂させるのだろうか?なぜ私たちはホックニーの作品に熱狂しなければならないのだろうか?
美術界では、もはや存在自体が一つのジャンルであり固有名詞となったデービッド・ホックニーを表現する修飾語は限りなく多い。そのうち代表的なものが「(存命の作家のうち作品が)#最高額の作家」という言葉だ。1972年の作品「芸術家の肖像画―プールと2人の人物(Portrait of An Artist(Pool with Two Figures))」が2018年に米ニューヨークの競売大手、クリスティーズ(Christie’s)で約9030万ドル(約110億円)という記録的な価格で落札されたことからつけられた異名だ。また、このような記録が証明する(同時代の)#最も人気のある作家 または (現存する)#現代美術の巨匠 といった修飾語もまた、彼を表現する一般的な言葉だ。このように、デービッド・ホックニーは同時代の現代美術界で得られるほぼ全ての名誉を手にした。
1937年に英ヨークシャー(Yorkshire)のブラッドフォード(Bradford)で生まれたホックニーは、ブラッドフォード・スクール・オブ・アート(Bradford School of Art)とロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学んでいた頃から美術界で頭角を現した。彼は絵画、ドローイング、版画、写真、映像などの媒体に関心を持ち、グラフィックデザインという分野の中で多角的な実験を行ってきた。キャリアの初期である1950年代末から1960年代初めまでは、当時一世を風靡した抽象表現主義(Abstract Expressionism)やキュビズム(Cubism)の影響を受けた作品を制作したが、すぐにモダニズム(Modernism)とミニマリズム(Minimalism)に反旗を翻し、抽象的表現と具象的再現の境界をぼかした固有の表現様式を具体化しはじめた。これにより、ホックニーは自身の作品世界を代表する主な特徴の一つである多彩な様式や制作技法、テーマの選択において個性を発揮していった。その後、1964年の米ロサンゼルスへの移住は、ホックニーの作風において大きな分岐点となった。この時期、彼は自由に満ちた都市の風景を素材に絵画作業に没頭した。1970年代にはプールと2人の人物の肖像画、1980年代にはフォトコラージュと大型の風景画に心酔するなど、一つの制作技法やテーマにとらわれず変化を繰り返した。1990年代には「見つめること」に対する実験を続け、2000年代初めには伝統的技法から脱皮して最新のデジタル機器を活用したアイパッド(iPad)ドローイングのシリーズを発表するなど、現在に至るまで芸術の拡張のための試みを続けている。
「デービッド・ホックニー展」では、60年以上にわたり作家として生きてきたホックニーの作品世界を七つのセクションに分けて展示している。会場はほとんどが版画作品で占められ、そのうち「ロサンゼルス」「自然主義に向かって」「動く焦点」「ホックニーが見た世界」の4セクションには彼の主要な絵画作品が含まれている。「ロサンゼルス」では彼の絵画の中でも最もよく知られた作品の一つである「とても大きな水しぶき(A Bigger Splash)」(1967)を展示し、「自然主義に向かって」ではホックニーを象徴する絵画類型といえる2人の肖像画「クラーク夫妻と猫のパーシー(Mr. and Mrs. Clark and Percy)」(1970~71)が観客を迎える。「動く焦点」では、ホックニーに大きな影響を与えたアンリ・マティスを連想させる色彩の「ホテルの井戸の眺めIII(Views of Hotel Well III)」(1984~1985)を鑑賞することができる。最後のセクション「ホックニーが見た世界」では、以前国立現代美術館果川館で展示されたことのある大型分割絵画「Bigger Tree Near Warter Or/Ou Peinture Sur Le Motif Pour Nouvel Age Post-Photographique」(2007)を見ることができる。