
漆絵を描く許明煜とは誰か
ある人は許明煜(ホ・ミョンウク)を金属工芸家だと思っているだろう。またある人は写真家だと記憶しているかもしれない。最近ソウルのカナアートセンターを訪れたことがあるなら、漆絵作家だと言うだろう。そう、どれも許明煜。現在韓国美術界で注目されている作家の一人だ。
全ては許明煜の仕業
許明煜は写真家、金属工芸家、画家、インスタレーションアーティスト、どのような修飾語もふさわしい人だ。だが、自らは「ただ作業をする人」と話す。広告写真で名声を得た許明煜は、昼は広告写真を撮り、夜は個人の作品作りに没頭した。その写真が彼に芸術家の道を歩ませた。そして金属工芸に魅せられ、遅ればせながら大学に入学して金属工芸を学んだ。まるでリレーをするように、次にバトンがつながれたのは漆塗りだ。いまの許明煜を最も適切に説明するなら、漆で絵を描く人だ。漆塗りは韓国伝統工芸、木工や金属工芸の仕上げ塗料として使われていたもので、彼にとって漆は一種の絵の具だ。これまで彼が扱ってきた金属板、木、ファブリックが自然とキャンバスになった。単色画のように見える絵は、一年中28~30度の温度と70%の湿度を保った室内で少なくとも6カ月間、数十回塗り重ねた作品で、東洋的でありながらも現代的な色は瞬間の感情と気を込めて作った「その日の色」だ。許明煜は色を作り、漆塗りをし、自然に色と時間、よい気を自然に作品へと込めた。彼はそのように自身のよい感情と気を込めて作った作品が、見る人にとっても同じ共鳴を起こすことを願う。

漆塗りのペインティングを行うアトリエに立つ許明煜
Q. 写真に始まり絵画まで、全ての作業が自然につながったのですか?
A. そうです。とても自然でした。広告写真以外にもう少し何かをしたくて金属工芸を学びました。それぞれは一つの小さな幹にすぎません。結局作家の情緒を基に作業が完成しますよね。私は自分の作業が7歳の時の感性から出発したのだとよく話しますが、幼い頃に私が(鉄腕)アトムを集めていて、アトムからもらった癒し、安らぎのおかげでアトムの作品が出てきたのです。結局作業は一つです。工芸をしても絵を描いてもオブジェを作っても、全て私から出てきたものですから、一つの作業です。私が小さい頃から持っていた感性と全ての経験が混ざっています。
Q. 瞬間の好奇心だとしても、まずは一度試してみるということですね?
A. はい。その感情がとても重要だからです。どんな作業でも、自分の人生の経験値が蓄積されて出てくるものです。私が作家活動をしながら自分の長所だと思うのは、幸いにもさまざまなことをやってみたということです。写真も、事業もやってみました。家出もしたし、学校を中退もしました。餅売りをしたこともあります。他の人ができなかった経験が私の中に積もっていて、それが飛び出してくるのです。失敗した経験も経験ですし、きっと何かの役に立つでしょう。
A. そうです。とても自然でした。広告写真以外にもう少し何かをしたくて金属工芸を学びました。それぞれは一つの小さな幹にすぎません。結局作家の情緒を基に作業が完成しますよね。私は自分の作業が7歳の時の感性から出発したのだとよく話しますが、幼い頃に私が(鉄腕)アトムを集めていて、アトムからもらった癒し、安らぎのおかげでアトムの作品が出てきたのです。結局作業は一つです。工芸をしても絵を描いてもオブジェを作っても、全て私から出てきたものですから、一つの作業です。私が小さい頃から持っていた感性と全ての経験が混ざっています。
Q. 瞬間の好奇心だとしても、まずは一度試してみるということですね?
A. はい。その感情がとても重要だからです。どんな作業でも、自分の人生の経験値が蓄積されて出てくるものです。私が作家活動をしながら自分の長所だと思うのは、幸いにもさまざまなことをやってみたということです。写真も、事業もやってみました。家出もしたし、学校を中退もしました。餅売りをしたこともあります。他の人ができなかった経験が私の中に積もっていて、それが飛び出してくるのです。失敗した経験も経験ですし、きっと何かの役に立つでしょう。

許明煜のアトリエ
Q. 漆は扱いやすい材料ではありませんよね。漆塗りは温度と湿度に敏感です。それでもペインティングの塗料として漆を選んだ理由を教えてください。
A. 私が出したい色を一番よく表せるのが漆でした。色は私の気です。私が色を作るのは、その気を込めているのです。その日のよい気を込めなければなりません。ですから、気分が悪かったり、元気が出ない時には色を作りません。代わりに感情を鎮めるための作業をします。たとえばやすりをかけたりハンマーで叩いたりします。幸い作業範囲が広い分、色を作ること以外にもやることがたくさんあります。
A. 私が出したい色を一番よく表せるのが漆でした。色は私の気です。私が色を作るのは、その気を込めているのです。その日のよい気を込めなければなりません。ですから、気分が悪かったり、元気が出ない時には色を作りません。代わりに感情を鎮めるための作業をします。たとえばやすりをかけたりハンマーで叩いたりします。幸い作業範囲が広い分、色を作ること以外にもやることがたくさんあります。


漆塗りをした日付が書かれた色のスティックと作業道具
Q. これまでに作った色のうち、同じ色は一つもないそうですね。
A. 瞬間の感情に従って色を作るので、全く同じ色は出てきません。おかげでスティックによる作品も作ることになりました。色を記録し、保管するためにスティックを作り、保管したスティックを整理してひとまとめにしたことからスティック作品が始まったのです。2017年3月5日、4月25日、6月15日……。スティックに書かれた日付が漆塗りをした日です。少なくとも5回は漆塗りをし、スティック1本ができるまで8日かかります。600本のスティックを使った作品には4800日が投影されているのです。一つの作品が出来上がるまでに少なくとも6カ月、1年以上かかることになります。
Q. 時間がかかる作業です。先生の作業を貫くテーマも「時間」ですよね。ご自身にとって時間とはどんな意味がありますか?
A. 私が作業をする過程自体が時間を重ねるものですよね。私が時間を重ねるために作業をするのではありません(笑)。私にとって時間はとても自然なものです。木の枝から葉が落ちて再び新芽が出るように、作家許明煜にとって時間は自然なものなのです。私が完成だと思うまで繰り返し漆塗りをし、そうして色が重なり、ファブリックが重なり、スティックが重なりました。結局、完成すれば時間が重なっています。私の経験、そして私が色に込めたよい気が重なったのです。
A. 瞬間の感情に従って色を作るので、全く同じ色は出てきません。おかげでスティックによる作品も作ることになりました。色を記録し、保管するためにスティックを作り、保管したスティックを整理してひとまとめにしたことからスティック作品が始まったのです。2017年3月5日、4月25日、6月15日……。スティックに書かれた日付が漆塗りをした日です。少なくとも5回は漆塗りをし、スティック1本ができるまで8日かかります。600本のスティックを使った作品には4800日が投影されているのです。一つの作品が出来上がるまでに少なくとも6カ月、1年以上かかることになります。
Q. 時間がかかる作業です。先生の作業を貫くテーマも「時間」ですよね。ご自身にとって時間とはどんな意味がありますか?
A. 私が作業をする過程自体が時間を重ねるものですよね。私が時間を重ねるために作業をするのではありません(笑)。私にとって時間はとても自然なものです。木の枝から葉が落ちて再び新芽が出るように、作家許明煜にとって時間は自然なものなのです。私が完成だと思うまで繰り返し漆塗りをし、そうして色が重なり、ファブリックが重なり、スティックが重なりました。結局、完成すれば時間が重なっています。私の経験、そして私が色に込めたよい気が重なったのです。

「塗る」展示会場の全景、カナアートセンター © 許明煜
Q. 時間が一つの物として具体化されるのですね。最近のカナアートセンターでの個展のタイトルが「塗る」でした。ご自身の意見が反映されたのですか?
A. はい、私がタイトルをつけました。3年前に(ソウルの)アラリオギャラリーで行った展示も「塗る」でした。辞書で「塗る」を調べると、私たちが知っている定義以外にもある行為を繰り返すという意味があります。私は繰り返し塗り重ねます。色を重ね、スティックを重ね、重ねるということも「塗る」の範疇に入ります。1年、2年、4年、繰り返す行為を通じて一つの作業になるのです。
Q. 意図せずとも多くの人が先生の作業をテーマに「時間」を語り、作品から「時間の蓄積」を読み取ります。それならば、最初に先生が作品を通じて語りたかったことは何だったのでしょうか。
A. 私のよい感情と気を作品に投影し続けようとしました。私たちの先祖が水墨画を描く時、体を清めて一画一画に全神経を集中させました。私もそんな作業をしたいと思います。時間がかかる作業ですが、結局気をきちんと込めて伝えるのです。私は作家仲間にも、作家としての責任感に関する話をよくします。実は全ての作家が知らず知らず作品に感情を重ねているものだからです。本当に幸せに作業をすれば、その幸福感が重なるものです。そうやって重なった感情は見る人にそのまま伝わります。ですから鑑賞者のために、作品を所有する人々のために責任感を持たなければなりません。
Q. よい気を伝えようとするのが一番だったのですね。
A. たまにアトムの作品を買った人から連絡がきます。「アトムが私を見て笑いました」「仕事終わりに家に帰ると、玄関で私を唯一出迎えてくれるのがアトムです。本当にありがとうございます」と。私が幼い時に感じた感情がそのまま伝わったのです。よい気、よいエネルギーを多くの人と分かち合うこと。私はこれが芸術であり、作家の役割だと考えます。そうすればもっとよい世界になるのではないでしょうか?(笑)
A. はい、私がタイトルをつけました。3年前に(ソウルの)アラリオギャラリーで行った展示も「塗る」でした。辞書で「塗る」を調べると、私たちが知っている定義以外にもある行為を繰り返すという意味があります。私は繰り返し塗り重ねます。色を重ね、スティックを重ね、重ねるということも「塗る」の範疇に入ります。1年、2年、4年、繰り返す行為を通じて一つの作業になるのです。
Q. 意図せずとも多くの人が先生の作業をテーマに「時間」を語り、作品から「時間の蓄積」を読み取ります。それならば、最初に先生が作品を通じて語りたかったことは何だったのでしょうか。
A. 私のよい感情と気を作品に投影し続けようとしました。私たちの先祖が水墨画を描く時、体を清めて一画一画に全神経を集中させました。私もそんな作業をしたいと思います。時間がかかる作業ですが、結局気をきちんと込めて伝えるのです。私は作家仲間にも、作家としての責任感に関する話をよくします。実は全ての作家が知らず知らず作品に感情を重ねているものだからです。本当に幸せに作業をすれば、その幸福感が重なるものです。そうやって重なった感情は見る人にそのまま伝わります。ですから鑑賞者のために、作品を所有する人々のために責任感を持たなければなりません。
Q. よい気を伝えようとするのが一番だったのですね。
A. たまにアトムの作品を買った人から連絡がきます。「アトムが私を見て笑いました」「仕事終わりに家に帰ると、玄関で私を唯一出迎えてくれるのがアトムです。本当にありがとうございます」と。私が幼い時に感じた感情がそのまま伝わったのです。よい気、よいエネルギーを多くの人と分かち合うこと。私はこれが芸術であり、作家の役割だと考えます。そうすればもっとよい世界になるのではないでしょうか?(笑)


「塗る」展示会場の全景、カナアートセンター © 許明煜
日常になった作業
許明煜は一本気だ。作業のことだけを考える。「私は作業が全てです」。天真爛漫な表情で、しかし真摯な口調で彼は言う。現在許明煜はソウルを離れ、京畿道の竜仁にアトリエを置いている。彼に会う前、数回電話のやりとりをしながらアトリエをいつ訪れればよいか尋ねた時、彼はいつもこう答えた。「朝からアトリエにいますからいつでもお越しください」。早すぎもせず遅すぎもしない午後2時、竜仁のアトリエを訪れた。カナアートセンターで行われた彼の個展「塗る」が開幕して2日目のことだった。作業が休息であり、インスピレーション、人生の答えになると話す人。許明煜はその日も黒いつなぎを着て作業中だった。毎日同じことを繰り返すのは退屈で面白くない。しかし、許明煜にとってはそうではない。苦行のように見える時間さえ彼が最も楽しみ、好む時間だ。



第1アトリエの隣にあるショールーム
Q. 朝9時から夜8時まで、平日も週末もなく作業するそうですね。辛くありませんか?
A. 私がペインティングするアトリエに来られたのでお分かりでしょうが、息が詰まりそうです。毎日漆塗りをし、乾かしていると一年中アトリエの温度は25~30度を維持しなければならず、湿度は70%以上でなければなりません、梅雨時の蒸し暑い天気のようです。一日中作業をしていると汗だくになります。その過程と作品が与えてくれるエネルギーが、私が行う行為自体が楽しいからそうしているのです。そうでなければできません。楽しみは私によい気を与えてくれ、そのよい気でまた色を作ります。それがずっと繰り返されるのです。
Q. 一つの物事に没頭しやすい方ですか?
A. 私は実はせっかちな性格です(笑)。でも、今描いている絵はせっかちではできない作業です。時間を重ねなければならない作業だからです。それでもできるのは、待ち時間にせっかちな私ができる作業をするからです。この二つが相互に補完し合うのです。それに、作家は作業を続けることが重要です。そうやって作業の中からまた新しい作業が出てきたりもします。
Q. 作業する許明煜を除いた許明煜という人をどう説明できるでしょうか?
A. 許明煜はただ作業が全てだと考えていただけばよいと思います。毎日毎日作業をして、全ての答えは自分の作業にあると考える人間です。例えば、詐欺に遭った時も私はこの作業を通じて癒されました。全てが作業です。死ぬ直前まで作業を続けると思います。
A. 私がペインティングするアトリエに来られたのでお分かりでしょうが、息が詰まりそうです。毎日漆塗りをし、乾かしていると一年中アトリエの温度は25~30度を維持しなければならず、湿度は70%以上でなければなりません、梅雨時の蒸し暑い天気のようです。一日中作業をしていると汗だくになります。その過程と作品が与えてくれるエネルギーが、私が行う行為自体が楽しいからそうしているのです。そうでなければできません。楽しみは私によい気を与えてくれ、そのよい気でまた色を作ります。それがずっと繰り返されるのです。
Q. 一つの物事に没頭しやすい方ですか?
A. 私は実はせっかちな性格です(笑)。でも、今描いている絵はせっかちではできない作業です。時間を重ねなければならない作業だからです。それでもできるのは、待ち時間にせっかちな私ができる作業をするからです。この二つが相互に補完し合うのです。それに、作家は作業を続けることが重要です。そうやって作業の中からまた新しい作業が出てきたりもします。
Q. 作業する許明煜を除いた許明煜という人をどう説明できるでしょうか?
A. 許明煜はただ作業が全てだと考えていただけばよいと思います。毎日毎日作業をして、全ての答えは自分の作業にあると考える人間です。例えば、詐欺に遭った時も私はこの作業を通じて癒されました。全てが作業です。死ぬ直前まで作業を続けると思います。
許明煜が作業する姿を収めた映像。開いたドアの外に見える季節の変化を通じて時間の流れが感じられる。© 許明煜
アトリエ、許明煜の宇宙
都市の郊外に作られた素敵なギャラリーやカフェのように見える建物。許明煜は二つの棟に分かれた第2アトリエとそこから車で3分ほど離れた第1アトリエ、そして現在工事中の第3アトリエまで、三つのアトリエを構えている。黄色、緑、茶色、オレンジ色などで漆塗りされた器が収められたキャビネットからハンマーやプレス機などの工具が並んでいるテーブル、彼が行う作業と同じように幅広い品物がアトリエの空間を満たした。ほかにもアトリエには魅力的なディテールがいっぱいだ。インテリアと完璧に調和したテーブル、椅子、スピーカー、照明のスイッチ。全て彼が自らデザインし、作った。永遠に大人になりたくないピーターパンのネバーランドのように、アトリエは作業にだけ没頭するために誕生した彼の完璧なネバーランドだ。ここで写真、オブジェ、アートファニチャー、ペインティングなど全ての作業が「メビウスの帯」のようにつながっていると説明する彼の作業が行われる。

木に囲まれたショールームの全景

整然と並んだ作業道具。複雑さの中にも規則がある。
Q. この場所はすぐに見つかったのですか?
A. 一度で見つかりました。最初に来た時はただ廃墟になった建物だけがあったのですが、周辺の景色や山の姿に魅かれました。山が高すぎると威圧感を与え、低すぎると面白くありませんが、ここは山の稜線も適度で本当に美しかったのです。リラックスした気分にさせてくれます。ここだと思いました。それで、売らないというのを6カ月待って当時の相場の3倍の値段で買いました。
Q. それぞれのアトリエにドアも窓もたくさんあります。
A. 自然にあるアトリエなら自然を感じなければなりません。第1アトリエのドアには敷居がありません。自然がアトリエの中に入ってこられるように境界をなくしたのです。雨が降れば雨が、雪が降れば雪がアトリエの中に入ってきます。窓からは風が入ってきます。このように木と自然を感じられます。
A. 一度で見つかりました。最初に来た時はただ廃墟になった建物だけがあったのですが、周辺の景色や山の姿に魅かれました。山が高すぎると威圧感を与え、低すぎると面白くありませんが、ここは山の稜線も適度で本当に美しかったのです。リラックスした気分にさせてくれます。ここだと思いました。それで、売らないというのを6カ月待って当時の相場の3倍の値段で買いました。
Q. それぞれのアトリエにドアも窓もたくさんあります。
A. 自然にあるアトリエなら自然を感じなければなりません。第1アトリエのドアには敷居がありません。自然がアトリエの中に入ってこられるように境界をなくしたのです。雨が降れば雨が、雪が降れば雪がアトリエの中に入ってきます。窓からは風が入ってきます。このように木と自然を感じられます。



スイッチからやかんやコップ、テーブルまで、全て許明煜の手によって生み出された。
Q. 第1アトリエの隣にあるショールームには、欲しくなるテーブルウェアがたくさんありました。
A. テーブルウェアを作った背景はそこから説明できます。初めは第1アトリエだけがありました。ショールームはギャラリーやソウルから来た客を迎える場所でした。それで作り始めたのです。コーヒーとデザートをお出ししなければなりませんが、気に入ったものがありませんでした。やかんが気に入らなければ、私は金属工芸をしているので手作りします。そうやって作っていると、数が増えていきました。もっと大きなテーブルが必要になり、器が増えると食器棚が必要でした。そうやって作業が広がっていったのです。売ろうと思って作ったのではなく、私が使うためです。ところが、それを見たあるギャラリーから展示を提案されて売り始めたのです。
A. テーブルウェアを作った背景はそこから説明できます。初めは第1アトリエだけがありました。ショールームはギャラリーやソウルから来た客を迎える場所でした。それで作り始めたのです。コーヒーとデザートをお出ししなければなりませんが、気に入ったものがありませんでした。やかんが気に入らなければ、私は金属工芸をしているので手作りします。そうやって作っていると、数が増えていきました。もっと大きなテーブルが必要になり、器が増えると食器棚が必要でした。そうやって作業が広がっていったのです。売ろうと思って作ったのではなく、私が使うためです。ところが、それを見たあるギャラリーから展示を提案されて売り始めたのです。

第2アトリエ2階のダイニング空間
Q. 第2アトリエの2階にダイニング空間を作った理由はありますか?
A. そこは私のスタッフたちのための空間です。ペインティングは最初から最後まで私がしますが、テーブルウェアのような作業はスタッフに下準備を手伝ってもらわなければなりません。ハンマーを打つスタッフもいるし、はんだ付けをするスタッフもいます。そして最後に私の色、私の気を吹き込んで作業を終えるのです。私は人を採用する時、人となりを見ます。テクニックは、私のアトリエでは時間がたてば全て解決されます。そうなるようにシステムを作っておいたのです。例えば、テクニックが優れていても人格がなっていない人が来たとします。そうするとその人のよくない気分と感情が物に、作品に取りつくのです。致命的です。
だからこの場所が必要なのです。気楽に休めるようにコーヒーメーカーを置き、美味しい豆とデザートを置いておきます。ここで週に数回朝会をします。「今日することはこれで、お前はこれをして……」。こういうのが朝会だと思いますよね?違います。それぞれが楽しかったこと、面白かった話をするのが朝会です。そんな話をするとどうですか。楽しくなります。楽しいのが顔に表れます。するとこう言います。「作業をしよう!」。そんな気分で、そんな感情で作業をするのです。
A. そこは私のスタッフたちのための空間です。ペインティングは最初から最後まで私がしますが、テーブルウェアのような作業はスタッフに下準備を手伝ってもらわなければなりません。ハンマーを打つスタッフもいるし、はんだ付けをするスタッフもいます。そして最後に私の色、私の気を吹き込んで作業を終えるのです。私は人を採用する時、人となりを見ます。テクニックは、私のアトリエでは時間がたてば全て解決されます。そうなるようにシステムを作っておいたのです。例えば、テクニックが優れていても人格がなっていない人が来たとします。そうするとその人のよくない気分と感情が物に、作品に取りつくのです。致命的です。
だからこの場所が必要なのです。気楽に休めるようにコーヒーメーカーを置き、美味しい豆とデザートを置いておきます。ここで週に数回朝会をします。「今日することはこれで、お前はこれをして……」。こういうのが朝会だと思いますよね?違います。それぞれが楽しかったこと、面白かった話をするのが朝会です。そんな話をするとどうですか。楽しくなります。楽しいのが顔に表れます。するとこう言います。「作業をしよう!」。そんな気分で、そんな感情で作業をするのです。


常に日光があふれる彼のアトリエ
Q. ソウルの漢南洞にカフェ「漢南アトリエ」を作ったのも何か理由がありそうです。
A. 私がアトリエでコーヒーをいれ、デザートを出すことを人々が経験したがったのです。インスタグラムでメッセージがたくさん届きました。「先生のアトリエはどこですか。お邪魔してもいいですか」と。ギャラリーのVIPツアーでこのアトリエに来た方が写真を撮って個人のインスタグラムに投稿したことでここが広まったのです。すると、作家のアトリエでコーヒー一杯の余裕を感じたい方々が私にメッセージを送ってきました。その方々を個人的に呼ぶことはできませんよね。それで漢南アトリエをオープンしたのです。ちょうどこの第2アトリエを設計した(建築家の)イ・ソンラン所長がよい提案をしてくれて、進めることができました。
Q. それで名前もアトリエなんですね。
A. はい。初期には私がそこで作業もしました。実は漢南アトリエは収益が残る仕事ではありません。イ・ソンラン所長もそうですし、私もそうですし、漢南アトリエを運営する理由は一つです。多くの人にこの余裕と楽しさを与えたい。作品を買わなくてもコーヒー1杯の価格で作品の経験を買うことができます。
A. 私がアトリエでコーヒーをいれ、デザートを出すことを人々が経験したがったのです。インスタグラムでメッセージがたくさん届きました。「先生のアトリエはどこですか。お邪魔してもいいですか」と。ギャラリーのVIPツアーでこのアトリエに来た方が写真を撮って個人のインスタグラムに投稿したことでここが広まったのです。すると、作家のアトリエでコーヒー一杯の余裕を感じたい方々が私にメッセージを送ってきました。その方々を個人的に呼ぶことはできませんよね。それで漢南アトリエをオープンしたのです。ちょうどこの第2アトリエを設計した(建築家の)イ・ソンラン所長がよい提案をしてくれて、進めることができました。
Q. それで名前もアトリエなんですね。
A. はい。初期には私がそこで作業もしました。実は漢南アトリエは収益が残る仕事ではありません。イ・ソンラン所長もそうですし、私もそうですし、漢南アトリエを運営する理由は一つです。多くの人にこの余裕と楽しさを与えたい。作品を買わなくてもコーヒー1杯の価格で作品の経験を買うことができます。

アトムの仮面をかぶっている子どものフィギュア。子どものモデルは許明煜本人だ。
Q. 現在三つ目のアトリエが工事中です。先生が考える理想のアトリエはどんな姿ですか?
A. ショールームの2階のテーブルに本が一冊置かれていたでしょう?その中にドナルド・ジャッド(米国のアーティスト)のアトリエの風景があります。私がその本を広げてから長い時間が経ちましたが、それが私が願ったアトリエです。こんなアトリエで作業できればいいのにと漠然と考えていました。ところが、ある人が新しく建てたアトリエがドナルド・ジャッドのアトリエよりも素敵だと言ってくれました。私の夢が叶ったのです。漠然と想像していたものが現実となり、それが達成感につながります。大衆のために私が作家としてしなければならないことは何かと考えた時、観衆から得られる反応もそうです。これらが私にとって答えを与えてくれます。そうやって進み続けるのです。
A. ショールームの2階のテーブルに本が一冊置かれていたでしょう?その中にドナルド・ジャッド(米国のアーティスト)のアトリエの風景があります。私がその本を広げてから長い時間が経ちましたが、それが私が願ったアトリエです。こんなアトリエで作業できればいいのにと漠然と考えていました。ところが、ある人が新しく建てたアトリエがドナルド・ジャッドのアトリエよりも素敵だと言ってくれました。私の夢が叶ったのです。漠然と想像していたものが現実となり、それが達成感につながります。大衆のために私が作家としてしなければならないことは何かと考えた時、観衆から得られる反応もそうです。これらが私にとって答えを与えてくれます。そうやって進み続けるのです。