ART & CULTURE

金用官、韓国で最も有名な建築写真家
われわれはどうすれば旅行せずに都市の建築を鑑賞できるだろうか。答えは簡単だ。グーグルの検索バーに見たい建物の名前を入力すれば、地球の裏側にいてもその都市の建築を見ることができる。まさに写真を通じて。金用官(キム・ヨングァン)は建物を撮る建築写真家だ。ソウルのサムスン美術館リウム、現在は撤去された国立中央博物館、ソウル市庁の新庁舎、建築家の伊丹潤が設計した済州の水、風、石の美術館など。彼が建築写真を撮り始めた1990年から短い周期で建設と撤去が繰り返される変化に富んだ都市ソウル、そして韓国の有名な建築物のほとんどが彼の写真に収められた。
1990年の初夏のある日、20代前半の青年金用官はソウル駅から大田行きの始発列車に乗った。彼の手には昨日使い方を習ったカメラがあった。「写真をやってみないか」。誠実で落ち着いた彼の勤務態度に目を付けた職場の先輩の提案に「はい!」と答えてから半年ほどが過ぎた頃だ。彼は建築月刊誌「建築と環境」の編集部で働いていた。「カメラを触ったことはありませんでしたが、チャンスだと思いました。それから半年間かばん持ちをしました。先輩が写真を撮るときは黙って横に立ち、動きや行動を見ました」。ソウルに戻った翌日、緊張しながら持って行った彼の写真を見た先輩はこう言った。「天才だな。上手く撮れてるぞ」。そうして彼の最初の建築写真はその月の「建築と環境」に10ページにわたって掲載された。翌月には表紙を、その翌月には雑誌一冊が彼の写真で埋められた。
金用官は今後自身がすべきことが何かを悟った。建築写真を撮ること。「建築と環境」の写真記者を経て2004年から2011年まで建築月刊誌「空間」の専属写真家として活動した。ロダンギャラリー(現・友情アートセンター)を撮った写真で、韓国人では初めて米国建築家協会から賞ももらった。約30年間建築写真家として活動すると同時に、現在は建築専門出版社アキライフを運営し、建築専門雑誌「ドキュメンタム」を発行している。家具デザイナーの椅子と照明、さまざまなジャンルのLPなど、自分の趣味で埋め尽くされたアキライフの事務所で、建築写真家の金用官に会った。自らは商業写真だと言うが、見る人の芸術的感性を呼び覚ます彼の写真世界と今後やりたい作業、そして建築物が作り出すソウルの風景に関して話を聞いた。
흐린 날 촬영한 서울시 신청사 © 김용관

曇りの日に撮影したソウル市新庁舎 © 金用官

비오는 날의 안양 알바로 시자홀 © 김용관

雨の日の安養アルヴァロ・シザホール © 金用官

안개 낀 아름드리 미디어 © 김용관

霧のかかったアルムドゥリメディア © 金用官

Q. 2回目の撮影で表紙写真を撮り、それから「建築と環境」の写真を全て任されたそうですね。
A. 運がよかったんです。上手いとほめられて内心うれしく、それでもっと一生懸命やりたくなりました。現場に何度も行きました。他の人が1日行くなら私は2日行かなくては、2日行くなら3日行かなくては、と思いました(笑)。ありきたりですがそうやって単純に、わき目もふらずに一筋に歩いてきたんです。そうやって続けていると、経験も増え、実力も伸び、この分野である程度知られるようになりました。

Q. 誉められたことが原動力になったんですね。その次に建築写真に情熱を持たせたものは何ですか。
A. フリーの写真家にとっては、自分の名前がブランドです。最近は誰もがブランディングとマーケティングの時代だと言いますが、1990年代後半の私もそんなことを考えていました。これからもこの業界で仕事をして食べていくには、それだけ自分自身に価値がなければならないと。そうすればそれだけの対価を得られるし、よい人々と仕事ができ、それがさらによい作業をするチャンスにつながるからです。「この写真は金用官だ」、「金用官らしい」と言われたいというよりかは、当然そのように言われなければならないと思いました。それが価値だと考えたのです。

Q. 「金用官らしい」というと思い浮かぶ写真があります。雨が降る京畿道・安養のアルヴァロ・シザ(ポルトガルの建築家)ホールや曇った日のソウル市新庁舎、霧のかかったアルムドゥリ・メディア(ソウル市内の出版社)。少し薄暗く、建物の周辺の雰囲気までそのまま収めた写真です。どのような過程と経験が金用官の個性を作ったのか気になります。
A. 最初に写真を習った時は教科書的に習いました。青い空をバックに、太陽が動く方向に合わせて建物を撮るのです。コンパスまで持ち歩きました。そうすると建築雑誌に掲載される写真は全般的に似たようなものばかりでした。若い頃は何も知らずに一生懸命働いていましたが、フリーとして独立してから自分だけの個性を持たなければと考えたのです。個人的に晴れていながら少し雲のかかった天気が好きですが、そのような場面に建物があるととても叙情的な感じでした。「そうだ、建物にも表情があるのに、どうして真昼の青い空の時に撮らなければならないんだろう?」。わざとそんな時間帯に行って何度も撮ってみて、あれこれ工夫しました。そうしながらも建築的な長所は強調しようとしました。
건축사진가 김용관

建築写真家の金用官

그가 좋아하는 의자와 조명, 음반, 책으로 가득한 아키라이프 사무실

彼が好きな椅子と照明、LP、本で埋まったアキライフの事務所

Q. 「建築写真の徹底的な再解釈を追求する写真家」と表現した記事も見ました。
A. 私は自分を作家だとは思いません。多くの人が作家という表現を自然に使いますが、私は展示を開いてある世界を語りたい写真作家ではありません。商業写真家です。ですが自分の思い通りに自分の個性を表現する人間だという自負心はあります。

Q. 建築家やクライアントの反応はどうですか?
A. 彼らは私の感覚や経験、個性を買いたくて私に費用を払い、写真を撮るわけですよね。私と仕事をする方々は金用官と仕事をすること自体が楽しいのです。実際に誰もが私に仕事を頼めるわけではありません。意志がなければならないのです。私は他の人より(費用が)高いですし、気難しいですからね(笑)。「こう撮ってください、ああ撮ってください」という言葉に一度も妥協したことはありません。自信があるからというより、それが正しいと思っています。いわば「プロ」ですから、料金に見合った仕事をするために自分なりに最善を尽くします。むやみにたくさん撮らず、長い間見つめてから慎重に撮影し、恥ずかしくない程度になれば世に出します。

Q. 一般の写真と建築写真はどのように違うのですか?
A. 時々建築写真に関する講義をする時は、最初にこう説明します。3次元の建築物を2次元の平面に移す作業だと。一方で、建築写真家は伝達者でもあります。ある建築物を大衆に初めて知らせ、経験させる役割もしますよね。建築写真は明確な目的がある写真で、そこには金用官という人間の個性も入っていなくてはなりません。そのために現場に何度も行くということもあります。写真を通じて建物を理解できるようにするには、まず私が利用者の立場になって経験する必要があります。次に専門家の立場からこれを写真として構成しなければなりません。また、建築写真は建築家の作業を記録するためのものである場合が多いのです。つまり、クリエイティブな創作者の作業を、別の感性で整理する仕事でもあります。
건축 전문 잡지 <다큐멘텀>. 현재 6호까지 발행됐다.

建築専門雑誌「ドキュメンタム」。現在6号まで発行されている。

아키라이프에서 처음 출판한 책, 덴마크 건축 회사 BIG의 작품집.

アキライフで初めて出版した、デンマークの建築会社BIGの作品集

Q. 一つの建物を撮影するのに、時間はどれほどかかりますか?
A. 建築主の状況、日程など特別な場合でなければ、一つの建物に少なくとも3~4日以上かけます。天気が悪ければ無駄足になることもありますが、誰かに言われてからではなく、写真を撮るのにふさわしい時を見つけるためです。それが私がこれまで習い、学んだ結果であり、そのような態度が結局私を作ったということでもあります。

Q. 一人の創作者の作業を記録するというところからくる使命感のようなものもありますか?
A. 若い時は分からなかったような気がします。ただ単純に生活のために一生懸命仕事をしていましたが、長い間この仕事をしていると、自分は重要な仕事をする人間だと思うようになりました。建築写真は私にとっても非常に重要な作業で記録ですが、一人の創作者の人生の記録でもあります。私と20年以上仕事をしている建築家もいます。ある意味では私が彼らの人生を記録していたのです。また、もう少し幅広く見れば建築は都市に、そして文化に含まれていますよね。一人の歴史、一時代の記録になるかもしれないのです。「いい加減に写真を撮ってはいけない」。 年を取るにつれ、もっとそう思うようになりました。
이타미 준이 설계한 석 미술관 © 김용관

伊丹潤が設計した石の美術館 © 金用官

이타미 준이 설계한 풍 미술관 © 김용관

伊丹潤が設計した風の美術館 © 金用官

이타미 준이 설계한 수 미술관 © 김용관

伊丹潤が設計した水の美術館 © 金用官

Q. 金用官のスタイルを代表する写真はたくさんありますが、 建築家・伊丹潤の水、風、石の美術館の写真が非常に印象的です。ススキと風を抱いた水の美術館の写真は人生で五本の指に入ると言及されたことがありますよね。済州の天気予報を見て、雪が積もった石の美術館をカメラに収めるために済州行きの飛行機に飛び乗ったというエピソードもドラマチックです。
A. 実は水、風、石の美術館の写真は全て夏に撮りました。済州に大雪が降るとのニュースを見て、「雪が積もった時の石の美術館の姿には大変な力がありそうだ」と漠然とした考えだけであの場面を見に行ったのです。水の美術館はもともとあれほどススキがある場所ではありませんでした。他の仕事のために済州に行って近くを通りがかったところ、建物が放置されて草が茂っていたのです。「いったいどんなふうに管理をしているんだ」とぼやきながら通り過ぎてふと見ると、ススキが風になびいてとても素敵でした。それからようやく建物が目に入ってきました。水の美術館の写真を見ると、建物は写真のうち10%程度しか見えません。しかも逆光です。急いで太陽を隠して、自分が見た場面をそのまま撮らなければならないと思ってあわててカメラを立てて撮りました。それなのに、あんな写真が撮れるとは思いませんでした。

Q. 建築家、伊丹潤とはどうやって仕事をすることになったのですか?
A. 「空間」の専属写真家をしていた時、伊丹先生の特集がありました。ところが、少し制約が多かったのです。例えば、写真は必ず自分のお抱えの写真家が撮らなければならないというのです。つまり、写真は自ら提供するということです。伊丹先生は韓国の写真家と仕事をしたことがありませんでした。長い間一緒に仕事をしている日本の写真家がいましたし。でも、私も自分の個性がある人間です。「空間」は私の個性を重視していた雑誌ですから、記者が必死に説得しました。その後、伊丹先生が写真を撮る前に私と一度会いたいと言いました。しかし、私はそれを拒否しました。ただ私の感性を経験してくださいと。実は、私は昔写真を撮る前に建築家と会いませんでした。他の影響を受けるのが嫌だったのです。

Q. 伊丹先生は写真を見てどのような反応でしたか?
A. 雑誌が出たら驚いたそうです。自分が何の説明もしていないのに、どうしてこんな場面を撮ったのか、韓国にもこんな写真家がいたのかと。非常に印象的な写真が何枚かありましたが、建築家の特徴を表すために私が苦労して撮った場面でした。その次からは韓国のプロジェクトを私に任せてくれました。そうやって水、風、石の美術館も撮ることになりました。

Q. 特に愛着がある写真はありますか?
A. 伊丹潤先生との仕事、そして最近では、どちらにしても私は商業写真家なので、 南海のサウスケープ(ホテル)の写真や鬱陵島のコスモス(リゾート)の写真が思い浮かびます。
1995년에 지어진 밀알학교 © 김용관

1995年に建てられたミルアル学校 © 金用官

공간사옥. 1970년대 지어진 구사옥부터 1990년대 지어진 신사옥, 2002년에 지어진 한옥까지, 이 사진 한 장에 모두 담겼다. © 김용관

「空間」社屋。1970年代に建てられた旧社屋から1990年代に建てられた新社屋、2002年に建てられた韓屋まで、この写真1枚に全て収めた。© 金用官

Q. 1990年代から活動しています。韓国建築の流れが見えそうですが、いかがですか?
A. 見えはしますが、それを定義することはできません。私は学者ではありませんから。代わりに「優れた建築」とは何かと考える時、伝達者の立場から自分の観点を話すことはできます。私は多くの人がよい経験をできる建築が「優れた建築」ではないかと思います。人々が新しい経験をし、建築の重要さも知るようになるからです。ですから公共建築が重要で、その力で民間建築もさらに発展することができるのでしょう。プログラムによっては民間建築を通じてもいくらでもよい経験ができます。優れた建築と立派な建築は別物です。建物の設計と完成度、周辺の環境がいくら完璧だとしても、誰もが経験できるものではない建築物は優れた建築といえるでしょうか。立派な建築であることは確かですが。

Q. 旅行者に韓国の優れた建築物を推薦するなら?
A. その質問をよくされます。多くの建物を経験してきましたが、答えはほとんど変わりません。公開されている建物の中では(サムスン美術館)リウム、国立現代美術館ソウル館、昌徳宮、宗廟、そして建築物とみるには中途半端ですが、(ソウルの)仙遊島公園も好きです。仙遊島公園は昔の浄水場を公園にしたところです。つくられたものですが、建築家はあまり自分を表現しようとしなかったようです。野生的です。自然な感じで、一味違った安らぎがあります。
리움 미술관 © 김용관

サムスン美術館リウム © 金用官

김용관이 전 사무실 건물에서 촬영한 눈 내린 창덕궁 © 김용관

金用官が以前の事務所の建物から撮影した雪の降る昌徳宮 © 金用官

Q. サムスン美術館リウムは自ら建築写真を撮影し、その作業が美術館に所蔵されてもいます。
A. 好みは分かれますが、今のところ韓国を代表する建築物です。世界的な建築家が参加していますし(リウムの三つの棟は、スイスの建築家マリオ・ボッタ、フランスの建築家ジャン・ヌーヴェル、オランダの建築家レム・コールハースがそれぞれ設計した)、その中のコンテンツも素晴らしいです。それに、入場料さえ支払えばその空間とコンテンツを経験できます。最近注目・推薦したい建築を聞かれた時には国立現代美術館ソウル館と答えます。韓国で場所的には最高の建築物です。ソウルの人口密度から見て、今後数十年間に西大門の前でこのようなプロジェクトが行われるのは難しいでしょう。韓国を代表する文化がある街の、韓国を代表する美術館。場所の力、そしてその中に込められた芸術というコンテンツがそこをさらに輝かせます。入場券を買わなくてもある程度内部の空間を経験でき、広場で遊ぶこともできます。

Q. 多くの古宮のうち、特に昌徳宮を推薦する理由はありますか?
A. 個人的に昌徳宮が好きです。私の事務所が昌徳宮の向かいの建物にありました。習慣のように時間ができるたびに昌徳宮に散歩に行きました。後苑という美しい庭園もありますが、昌徳宮は全てが美しく、安らかです。宗廟には正殿があります。正殿と向かい合うと、その場面一つだけで十分です。
인왕산에서 내려다본 서울 © 김용관

仁王山から見下ろしたソウル © 金用官

Q. SNSにソウルの街の建物の写真を投稿し、「都市の表情」とキャプションをつけたのを見ました。建物が都市の表情、風景を作ると思いますが、最近のソウルの表情はどうですか?
A. ソウルの表情は、いつもダイナミックだ(笑)。私が最初に建築写真と都市に関心を持ち始めた時も、ソウルは変化が速く、動きの多い都市でした。それも非常に興味深いことです。時間があれば、仁王山のような山に登ってソウルを見下ろしてみてください。私は建築写真を撮る人間で、都市の優れた建物と場所を探し回る仕事をしています。それでもある部分ではソウルは誰もが言うように秩序も力もなく、マンションは美しくなく、大きく景観を損ねているようです。でも少し高いところに上れば、その地形と建物が調和して見えます。ソウルという都市を少し気楽に慈しむことができます。「ソウルを憎みすぎたのではないか。だけどやっぱり魅力的な都市だ。本当にダイナミックだ」と思います。

Q. 約30年間建築写真を撮り、建築雑誌も作りました。今後さらにやってみたい仕事はありますか?
A. 私は商業写真家ですから誰かの依頼を受けて動きますが、数年前から純粋に自分の意志で動いて撮る写真作業もしたいと思うようになりました。周囲には、いま視覚的訓練をしていると話しています。自分で被写体や場面を探し回ったことはほとんどありませんでしたから。そんな気持ちで動くのはまたこれまでとは違うような気がします。そんな場面をたくさん見て、経験しなければならないと思っています。うまくいくかは分かりませんが、それでも写真家として数十年働いてきた経験があるので、写真の出来は悪くはないと思います(笑)。
그가 시각적 훈련을 하며 만난 장소 중 가장 좋았던 곳으로 꼽은 가파도. 원하는 시간대를 맞추려고 가파도에서 하룻밤을 보냈다. “사람은 아무도 없는 곳에서 청보리가 휘날리는데, 정말 감동이었어요.” © 김용관

彼が視覚的訓練をしながら訪れた場所のうち、最もよかった場所として挙げた加波島。望み通りの写真が撮れる時間帯に合わせようと加波島で一日を過ごした。「人が誰もいないところで青麦が揺れていたのが本当に感動でした」 © 金用官

August 2020 編集:金慧元
写真:安嘉濫

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  • August 2020
  • 編集: 金慧元
  • 写真: 安嘉濫
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