
HYBE LABELSのアーティストのトロフィーが並ぶトロフィーウオール
HYBE INSIGHT、音楽以上のエンターテインメントのための空間
ここを単なるミュージアムやギャラリーと称するには、その範囲が広すぎると感じた。「音楽」という領域で行われるあらゆること、例えばリズム、歌詞、メロディーとダンス、アーティストたちの努力、そして結果まで、その全ての過程を見せるというメッセージがまさにここ、HYBE INSIGHTの目的だ。
「HYBE INSIGHTは『We believe in Music』というミッションのもと、HYBEのアーティストとファンが音楽を介して出会う空間であり、これまでになかった新しい方法で音楽を鑑賞できるミュージアムです」
韓国の人気グループ、BTS(防弾少年団)の所属事務所であるビッグヒットエンターテインメントがHYBE(ハイブ)に社名を変更した際、最も重要なキーワードとしたのは「音楽」だ。当然のようだが、ここには多くのメッセージと目標が込められている。単にアーティストの個性や音楽、パフォーマンスだけに集中するという意図ではなく、音楽の真の意味とプロセスのためのあらゆる経験を伝えるという意志だ。そして、先月オープンしたHYBE INSIGHT(ハイブインサイト)はそのようなHYBEの意志を集約した結果だ。地下1階と地下2階の計4700平方メートルという広大な規模もそうだが、この空間は音楽によって想像し、体験できる全ての感覚を目覚めさせるエンターテインメントそのものだ。BTS、SEVENTEEN(セブンティーン)、TOMORROW X TOGETHER(TXT、トゥモロー・バイ・トゥギャザー)、ENHYPEN(エンハイフン)など、所属アーティストの華麗なステージや音楽を超越して彼らがどのような考えで音楽に向き合い、ファンの前に立つのか、そしてわれわれが音楽をどのようにこれまでと違った方法で楽しむことができるかを示してくれる。HYBE INSIGHTはこの空間を音(Sound)、踊り(Movement)、ストーリー(Story)という三つのキーワードでひもとく。

地下2階のHYBE INSIGHT入り口に向かう道
音楽を楽しむ準備はできていますか?
地下2階のネットワーキングラウンジを通り過ぎ、イントロ空間に入ると、まるで空間の中に吸い込まれるような感覚の光とサウンドを体験できる。そして、自然に「音楽」という巨大なポータルに接続される。地下2階は実質的な音楽制作のプロセスを中心にした展示だ。BTSを育てた房時赫(パン・シヒョク)議長とビッグヒットミュージックの首席プロデューサー、Pdogg(ピードッグ)のキャラクターがBTSの「Mic Drop」に関するエピソードを紹介するアニメーション映像から、実際のミキシング、マスタリングまでのプロセスが盛り込まれている。また、PdoggとプレディスエンターテインメントのプロデューサーのBUMZU(ボムジュ)、BTSのRM(アールエム)、SUGA(シュガ)、J-HOPE(ジェイホープ)の5人のワークスペースを360度カメラで撮影した「スタジオ360」空間も興味深い。本当にアーティストのワークスペースを訪れたような生き生きとした映像も印象的だ。アーティストの性向と趣向によって異なるようで似ている空間では、彼らが選んだスピーカーやアンプ、キーボード、ドラムパッド、ミキサーやオーディオインターフェース、エフェクターなどを四つのタッチモニターであちこち手を動かしながらのぞき見ることができる。

「音」をテーマにサウンドを作るプロデューサーとアーティストの物語が込められた空間
さまざまな展示スタイルと技術を見る楽しみ
展示の流れや空間ごとの観覧方法はまさに現在のデザイン、展示シーンの潮流を見せてくれる感覚的な手法に満ちている。BTSの「ON」をさまざまなレイヤーで分析したインフォグラフィックを通じて音楽がどのような構造で設計されているかを視覚的に確認することができ、ステムファイルとミニシーケンサーによって再生されるNU'EST(ニューイースト)の「BET BET」、BTSの「FAKE LOVE」では、自分でシーケンサーを操作してレイヤーを直接確認することもできる。また、「ダンス」を中心に構成された空間では、ライトボックスに映る一連のイメージを写真技法のクロノフォトグラフィー(Chronophotography) を活用して演出した。振付映像を時間の流れに沿って捉えたイメージで構成されており、アーティストの動きに隠れている細かいディテールを確認できる。

アーティストのダイナミックな動き。音楽に対する身体表現としてのダンスを新たな視角で体験できる。

アーティストがステージ上で着用した衣装や小物などを展示するミュージックラボ
このような技術は、地下1階に設けられた「異なる方法で聞く」ための空間で最大化される。音楽を聴覚的、または視覚的要素のみで体験するのではなく、多様なスペクトラムとして見せてくれる。それぞれ異なる音楽の波長をネオンライトで表現したり、木製オブジェから振動を発生させる触覚スピーカーで音楽を一味違った方法で鑑賞したりすることができ、楽譜を再構成したグラフィック作業や手で触れることができる点字楽譜などにより、多様な方法で音楽を感じることもできる。BTSの「Euphoria」は香りでも表現されており、振付映像とともに楽しむモーションインタラクティブ体験空間、ミニチュア模型のジオラマで再現したミュージックビデオの中の空間、そしてこだまのようにエコーがかかる残響室(Echo)と音の響きが消える無反響室(Silence)まで、それぞれの空間はまるで魔法の世界に来たように人々の視覚と聴覚、嗅覚と触覚全てを千変万化に楽しく刺激し、私たちが知らなかった感覚まで生き生きと呼び覚ましてくれる。

モバイルデバイスを利用してリズムゲーム形式のコンテンツを楽しむことができる。

「ストーリー」を中心にコンテンツを展開した空間

ユニークな聴覚的体験と瞑想の時間を提供する無反響室
音楽が伝える圧倒的没入感、HYBE MUSIC
なかでも地下2階から地下1階につながる空間に設置されたHYBE MUSICは、HYBE INSIGHTのハイライトといえる。ここはHYBEの歩みをはじめ、アーティストの血、汗、涙のにじむ努力とこれを通じて成し遂げた成果をファンとともに分かち合い、記念する空間だ。あえてこのようなメッセージを振り返らなくとも、地下1~2階をつなぐ高さ8.5メートルの大型トロフィーウオールと展示空間の全面に設置された大型スクリーンに圧倒され、大型トロフィーウオールとともにHYBE LABELSのアーティストの成果を大型スクリーンで鑑賞する瞬間は、特定のアーティストのファンでなくても十分感動できる。

HYBE LABELSのアーティストの活動と業績をドラマチックに表現したHYBE MUSIC

高さ8.5メートルの大型トロフィーウオール
BTS、7人の少年の癒し
HYBE INSIGHTは地下1階に展示のための空間を設け、1年に2回ほど企画展の開催を予定している。HYBE LABELSの所属アーティストと国内外の有名アーティストとのコラボレーション形態だ。


ジェイムズ・ジーンとコラボした「7人の少年の癒し」の展示室全景
HYBE INSIGHTのオープンを記念する最初の展示は「7人の少年の癒し」だ。世界的に注目されるビジュアルアーティスト、ジェイムズ・ジーン(James Jean)が参加した今回の展示は、彼の目から見たBTSのメンバーのイメージとともに、BTSの音楽のメッセージに共感し、再解釈した作品「Garden」で構成されている。作品の中ではBTSのメンバーが花の精霊になり、夢幻的なシーンを演出する。生命の持続性を意味する花として咲いた7人の精霊は、夜の守護者(Moonchild_RM)、根本的な美しさ(Narcissus_Jin)、勇気と挑戦の力(MeowTide_SUGA)、光の根源(Solaria_j-hope)、生命力の始まり(Champignon_Jimin)、神秘的な紫の宝石(Violane_V)、幸福を伝える存在(Cottentail_Jung Kook)として幻想的な色彩とドローイングで表現される。また、ジェイムズ・ジーンがBTSから得たインスピレーションとスケッチ、メンバーの特徴を生かしたキャラクターとしてデザインされた木彫りのオブジェなど、作業過程をのぞくことができる要素も含まれ、作品や展示に対する理解度を高めてくれる。この展示では、アーティストの声で作品解説を聞くことができる「アーティスト・ドーセント(Artist Docent)」サービスも提供する。観覧客はモバイルアプリで自分が選んだアーティストの声による作品解説を聞くことができ、アーティストと一緒に展示を見ているような体験ができる。

アーティストのアルバムが作品のように並べられているアウトロ
HYBE INSIGHT
住所 ソウル市竜山区漢江大路42 HYBE竜山地下1、2階
開館日 火~日曜日(毎週月曜日休館、週末・祝日・名節は開館)
開館時間 11:00~21:00(最終入場18:55、新型コロナウイルスにより短縮営業)
※観覧制限時間2時間(入場順に関係なく2時間まで)
入場券 「基本入場券(2万2000ウォン=約2160円)」と「フォトチケットを含む入場券(2万5000ウォン=約2450円)」 の2種類
利用方法 HYBE INSIGHTのウェブサイト(www.hybeinsight.com)、またはHYBE INSIGHTのモバイルアプリでQRコードのモバイル入場券を購入
住所 ソウル市竜山区漢江大路42 HYBE竜山地下1、2階
開館日 火~日曜日(毎週月曜日休館、週末・祝日・名節は開館)
開館時間 11:00~21:00(最終入場18:55、新型コロナウイルスにより短縮営業)
※観覧制限時間2時間(入場順に関係なく2時間まで)
入場券 「基本入場券(2万2000ウォン=約2160円)」と「フォトチケットを含む入場券(2万5000ウォン=約2450円)」 の2種類
利用方法 HYBE INSIGHTのウェブサイト(www.hybeinsight.com)、またはHYBE INSIGHTのモバイルアプリでQRコードのモバイル入場券を購入
映像 © HYBE INSIGHT