ART & CULTURE

ハンプトンズの埠頭にある倉庫の建築様式をモチーフにデザインしたパリッシュ・アート・ミュージアム。彫刻はロイ・リキテンスタインの「Tokyo Brushstroke I & II」 © Hazel Hutchins。パリッシュ・アート・ミュージアム提供

大都市NYの郊外で向き合うアート、ハンプトンズのギャラリーを巡る
アメリカ・ニューヨーク近郊、ハンプトンズの落ち着きを感じさせる光と海から吹く風はアーティストにひらめきを与える。アーティストだけでなくコレクターたちも、ゆとりあるひと時を満喫しようとここを訪れた。彼らによって生み出されたハンプトンズ独自のアートシーンを紹介する。
ニューヨーク中心部のマンハッタンから東のロングアイランドへ車を2時間走らせると到着するハンプトンズはアメリカ有数の高級避暑地として知られ、大物スターやセレブがここに自宅やセカンドハウスを所有している。都会の活気と、自然の中でのひそやかな暮らしを同時に楽しめる所で、アーティストもまた、こうした特別な環境に心ひかれた。19世紀後半、絵のような風景に魅了され、印象主義のアメリカの画家がここにアトリエを移した。20世紀半ばにもジャクソン・ポロック、ウィレム・デ・クーニング、ロバート・ラウシェンバーグ、ロイ・リキテンスタインらアメリカ現代美術を主導するアーティストが、マンハッタンの喧噪(けんそう)を離れてハンプトンズに家とスタジオを構えた。

イーストハンプトンには小さいながらも多彩なショップとギャラリーが集まっている。 © Shutterstock

ギャラリーが集まる通り、ニュータウンレーン
ギャラリーの多くがイーストハンプトンに集まっている。その代表格が1898年設立のパリッシュ・アート・ミュージアムだ。主にイタリア・ルネサンスの作品を収集したサミュエル・パリッシュの所蔵品を展示するために建設され、その後、アメリカのアーティストの作品もリストに加わった。2012年には5万6000平方メートルに及ぶウオーターミルの牧草地に拡張移転。設計は世界的な建築事務所、スイスのヘルツォーク&ド・ムーロンが担った。
コンテンポラリーアートギャラリーに興味があるなら、イーストハンプトンの中でもまずニュータウンレーンへ行こう。特有の悠然たるムードを醸し出す通りには世界的なギャラリーが立ち並んでいる。アーティストのライアン・ウォレスが2011年にオープンしたホールジー・マッケイ・ギャラリーもここにある。ライアン・ウォレスは初回の展示から実験的なアーティストの作品を幅広く紹介し、ハンプトンズのギャラリーシーンに新たな活力を吹き込んだ。

ホールジー・マッケイ・ギャラリーが企画した展覧会「Raymie Iadevaia, Yonder」。ホールジー・マッケイ・ギャラリー提供

ユニークな世界観を持つアーティストを取り上げているホールジー・マッケイ・ギャラリー。ホールジー・マッケイ・ギャラリー提供

ホールジー・マッケイ・ギャラリーの「Hilary Pecis, Adios Verano」展。ホールジー・マッケイ・ギャラリー提供

「来訪者のほとんどはコンテンポラリーアートに親しんできた方たちです。興味深い展示を求めてわざわざ足を運んでくるのです。地元のみならず海外からも多くの人たちが訪れます」。ウォレスには、大都市の郊外にありながら、くつろぎとともに本格的なアート空間を提供しているという自負がある。
街なかで他のギャラリーと競い合うわけではないため、紹介できるアーティストの幅が広いこともハンプトンズのメリットに挙げられる。アートへの深い愛情をもって来訪した人たちは、肩の力を抜き、アートをテーマに親密な会話を紡いでいく。展示作品の設置を終えたギャラリストとアーティスト、顧客が一緒に浜辺に行き、たき火を囲んで話し込んだりもする。

ハーパーズ・ギャラリーの「Marcus Brutus, Go To Work. Get Your Money and Come Home. You Don’t Live There」展。ハーパーズ提供

ハーパーズ・ギャラリーの内部

アートブックショップを兼ねたハーパーズ・ギャラリー。ハーパーズ提供

眼識をたよりに成長するギャラリー
ホールジー・マッケイ・ギャラリーの隣に店を構えるハーパーズはアートブックショップを兼ねている。著名な希少本ディーラーだったハーパー・レバインが1997年にオープンした。「イーストハンプトンは芸術家と作家、コレクターの文化的なハブ(中心拠点)の役目を果たしてきました。私がこのギャラリーを始めた当時、アーティストのリチャード・プリンス、シンディ・シャーマン、デザイナーのカルバン・クラインが心強い味方でした」。
ハーパーズ・ギャラリーは新進アーティストと知名度が比較的低いアーティストに活動の舞台を提供すべく努力し、多くのアーティストがハーパーズを経て注目される存在に成長した。ハーパーズはマンハッタンのアッパーイーストサイド、チェルシー、ロサンゼルスに支店を出し、最近もチェルシーにフラッグシップギャラリーを新たにオープンした。ハーパーズ成功の秘訣(ひけつ)はホールジー・マッケイ・ギャラリーと何ら変わるところはない。自身の眼識を信じる忍耐力と一貫性だ。5月にはロサンゼルスにあるハーパーズのギャラリーで韓国人アーティスト、チェ・ヘギョンが初の個展を開く。

ペース・ギャラリーの「Sonia Gomes / Marina Perez Simao」展。ペース・ギャラリー提供

ギャラリーが続々とハンプトンズに
最近はマンハッタンを出てハンプトンズに進出するギャラリーもある。2年前、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受けマンハッタンがロックダウン(都市封鎖)されると、世界有数のギャラリーがハンプトンズに目を向けるようになった。2020年だけでもペースやリッソン、クリマンズット、サザビーズなど、少なくとも七つのギャラリーがハンプトンズにオープンした。マイケル・ワーナー・ギャラリーもそのうちの一つ。同ギャラリーの共同オーナーであるゴードン・ベネクラセンに支店をハンプトンズに出した理由を尋ねると、「パンデミックが始まり、イーストハンプトンの家に逃れていたところ、知人がここにギャラリーをオープンするという話を耳にし、いい考えだと思いました。私たちもニュータウンレーンに物件が出ると、ちゅうちょなく契約しました」という答えが返ってきた。

以前はサングラス専門店だったマイケル・ワーナー・ギャラリーのハンプトンズ店で素晴らしいショーケースが開かれた。マイケル・ワーナー・ギャラリー提供

マイケル・ワーナー・ギャラリーの「Per Kirkeby: Paintings and Sculptures in Bronze」展。マイケル・ワーナー・ギャラリー提供

マイケル・ワーナー・ギャラリーの「James Lee Byars/Shōji Hamada」展。マイケル・ワーナー・ギャラリー提供

マイケル・ワーナーもハンプトンズで、マンハッタンやロンドン、ベルリンにある既存店とは趣向を変えた試みをしている。その一つが、2人のアーティストを思いがけない組み合わせで紹介する展示だ。中でも評判を呼んだのは、アメリカのコンセプチュアル・アーティスト、ジェイムズ・リー・バイヤーズ(1932~1997)がキャリア初期に日本で手掛けた彫刻を、人間国宝の日本の陶芸家、濱田庄司(1894~1978)の作品とペアリングした展示だった。小さなスペースでこそ初めて可能になる柔軟さが光った。

ペース・ギャラリーのイーストハンプトン店。Photography by Jonathan Nesturek

ハンプトンズの環境をいかに生かすかという実験は、他のギャラリーでも盛んに行われている。ペース・ギャラリーはマンハッタン・チェルシーとイーストハンプトンの2店、さらにロウアーマンハッタンのグリムギャラリーまで動員し、イギリスのアーティスト、ウィリアム・モンク展を6月初めまで開催する予定だ。
冬の長い眠りから目覚め生気みなぎるニューヨークのアートシーンを体験したいなら、ニューヨークだけでなくハンプトンズを回るアートツアーの日程を加えよう。パンデミックをきっかけに、ニューヨークのアート界はハンプトンズにまで領域を広げつつあるのだから。

ニューヨークでの滞在: ロッテニューヨークパレス
ロッテニューヨークパレスは、19世紀末に建てられた建築家ヘンリー・ビラードの邸宅と、55階建ての近代的なタワーが共存するホテルだ。アメリカの人気ドラマ「ゴシップガール」や数多くの映画に登場し、ニューヨーク旅行で欠かせない観光スポットに定着した。909室の客室と、15世紀のイタリアの大聖堂をモチーフにした美しい庭園があり、レストラン・ビラードや高級サロンのレアリティーズ、カクテルバーのトラブルズ・トラストなど、レストランとバーもそろえている。

住所 455 Madison Avenue at 50th St., New York
電話 +1-800-804-7035
ホームページ www.lottenypalace.com
May 2022 編集:李賢定
文:韓叡俊

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  • May 2022
  • 編集: 李賢定
    文: 韓叡俊
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