ART & CULTURE

本屋無事済州店の全景

[INSIDER GUIDE] 歌手ヨジョが散歩する済州
韓国南部の済州で本屋を営む歌手のヨジョに、済州・城山邑一帯のスポットを紹介してもらった。落ち着いて穏やかな、彼女によく似た場所だ。
「済州のもう一つのよい点は、家から車で15分もあればオルム(寄生火山)にも海にも行けることです。私は済州の夏が特に好きですが、朝起きてスーパーに行くように気軽に海の中に入れるのはどれだけ大きな幸せかわかりません」
ヨジョ、歌手・書店店主

よく行く散歩コースは?
車でクァンチギ海岸、トジンモクの海岸道路沿いに城山日出峰まで行ったりします。ここは「済州島四・三事件」(米軍政の支配下にあった1948年4月3日、朝鮮半島の南側だけでの総選挙実施は南北分断を固定化するとして反対した済州島の島民らが武装蜂起し、軍や警察が鎮圧を名目に多くの島民を虐殺した事件)の遺跡地でもありますが、トジンモクを訪れたらしばし黙とうをささげて済州島民の無念さと悲しみを慰めてください。
クァンチギ海岸 西帰浦市城山邑古城里224-33

クァンチギ海岸の景色。城山日出峰が見える。

好きなカフェは?
書店の隣にあるカフェゴンドリーによく行きます。近いですし、昼間に軽くビールを飲むにもいい店です。
カフェゴンドリ 西帰浦市城山邑スシ路10番ギル3

よく行くショップは?
アウトドアセレクトショップのホルライン。夏や冬に必要な品物があるたびに訪れる場所です。済州に2店舗ありますが、家から近い坪垈店に行きます。
ホルライン 済州市旧左邑坪垈2ギル34-3
よく行くレストランとおすすめメニュー
私が営む「本屋無事」の近所に「麺の味で食が進む」という変わった名前のククス(麺料理)店があります。ミョルチグクス (いりこだしの麺)からコギグクス(豚肉スープの麺)、夏にはヨルムグクス(大根の葉のキムチが入った麺)、コングクス(豆乳スープの麺)までさまざまな麺を味わうことができます。ビビンバやタッパル(辛く炒めた鶏の足)、手羽先フライなど他のメニューもあります。食事とお酒を一緒に楽しめる、地元の集会所のような場所です。私はその時々で気の向いたものを食べますが、最近はコングクスにはまっています。豆にすりおろしたナシだかリンゴだかが入っていて、自然な甘みで本当においしいです。ぜひ一度食べてみてください。
の味で食が進む西帰浦市城山邑スシ路10番ギル30

済州東部で必ず体験すべきことは?
光のバンカーではないでしょうか。美術と音楽と空間が出会う、共感覚的快感を体験できる場所です。私はここを訪れるたびにスタンダール症候群(芸術作品を鑑賞した人が動悸やめまいを感じる症状)とはこういうものかと思います。それほど見る人を圧倒する芸術空間です。
光のバンカ西帰浦市城山邑西城一路1168番ギル89-17

済州東部の穴場は?
本屋のすぐ前にある水山小学校です。水山鎮城と呼ばれる昔の城郭が塀になっている、とても古く美しい学校です。学校の裏側に鎮安ハルマン堂がありますが、新年になると友達とここを訪れ、本屋と済州の安寧と無事を祈ったりします。
水山小 西帰浦市城山邑スシ路9

水山小学校の塀の役割をする水山鎮城の古い城郭

済州らしい風景に出会える場所は?
五日市。大きな市場もいいですが、こぢんまりとした五日市を見物する楽しみがあります。地元の古城五日市場は、規模は小さくても充実しています。市場の横にある飲食店「イルオバン食堂」で出している定食も済州の風景を感じるのにぴったりです。
古城五日市場 西帰浦市城山邑古城オジョ路93
イルオバン食堂 西帰浦市城山邑古城オジョ路87

古城五日市場。韓国ドラマ「私たちのブルース」のロケ地でもある。

市場の人気店、イルオバン食堂

About Insider: 本屋と済州の無事を祈って、歌手ヨジョ
無事:何事もないこと、つつがなく平安であること
ヨジョは日常が無事であることを願い、重みのあるこの名詞を拝借して書店の名前を「本屋無事」とつけた。ヨジョは歌手だ。ヨジョという名前は、太宰治の小説「人間失格」の主人公の名前から取った。彼女が歌う数々の曲が人気を集め、ドラマの中で流れる歌はそれ自体が静かな背景となって人々に愛された。歌手として活動する合間に旅行や恋愛に関する文章を書き、繊細な感性を発信してきた彼女がソウルの北村に本屋無事をオープンしたのは2015年ごろのことだ。最初は美容室の看板が本屋の看板の代わりをしていた。それから2年ほどして本屋無事は済州島の城山邑に移転した。陸地(内陸)にあった書店が島に引っ越したことになる。名前はそのまま、本屋無事。アルム商会という美しい名前の看板がかかっている。古いからこそ美しいアルム商会の看板の写真はSNS(交流サイト)の定番となり、その数が増えるにつれて本屋を訪れる人も増えた。先ごろ西橋洞に本屋無事ソウル店もオープンさせ、済州とソウルを行き来しながら本屋を経営している。

Q.ソウルと済州を行き来して暮らしていますが、それぞれの日常は大きく違いますか?
A. ソウルではたくさんのスケジュールをこなし、公共交通が発達しているので行動半径が済州よりも大きくなります。一方、済州での暮らしはソウルよりもはるかに単純で静かです。本屋の裏に住んでいますが、そうすると一日中本屋から出ないことも多く、外出する時も地元から大きく離れることはありません。考えが自然と行動に従うように、済州では「何を食べようか」などと簡単なことばかり考えています。

Q.ミュージシャンであり、書店の店主として仕事のバランスをどのように取っているのですか。
A. その時々でできる範囲で仕事をし、たまに無理だと感じるほど手に余る時には周囲に積極的に助けを求めています。いつでも近くで助けてくれる人たちのおかげでたくさんの仕事を滞りなくこなせているようです。

Q.済州に移住した特別な理由はありますか?
A. 昔から済州が好きでした。それほど脚光を浴びていない頃からです。そうするうちに済州が人々の関心を集め、愛される島へと変わり始め、ここで暮らしたいという気持ちを無理やり押し殺していた時期もありました。でも、結局欲望が決心に勝ってしまいましたね。

Q.ソウルでの暮らしとどんな違いがありますか?
A. 済州ではソウルよりも空が大きく見えます。粒子状物質(PM)の濃度がソウルとあまり変わらない日でも、済州に遊びに来る人たちはやはり空気が違うとか、呼吸がしやすくなった気分だとか言いますが、私が思うにそれは空の影響ではないでしょうか。済州は空が占める面積が大きいので、それだけで気分がすっきりするんです。

Q.本屋無事を城山地域にオープンした理由を教えてください。
A. 西部に比べて比較的人が少なく、静かな東部に引かれました。それに、私が城山日出峰が大好きだということもあります。

Q.本屋無事の訪問客にどんな体験をしてほしいですか?
A. 本を見るのはもちろん、おのおのが必要としていた意味まで見つけることができればと思います。単純に本を売る場所ではなく、ワークショップやライブ公演などさまざまな文化を体験できる空間を作るために努力しています。本を読まなくても気楽に来店して「楽しかった」と思ってくれれば、私もうれしいです。

Q.済州をより楽しむ方法はあるでしょうか?
A. この島を最大限不便だと感じることです。済州はとても美しく、その分たくさんの痛みを経験した島です。私たちが友人の家に行ったときに物を触るのも、トイレを借りるのも気を使うように、済州も自分勝手にふるまってもよい空間ではないといつも肝に銘じてほしいです。その気持ちを常に思い出して守ろうと努力することは、島の美しさを保つことであり、結果的に自分のためにもなります。長い間済州の美しさを楽しめるからです。

Q.ヨジョさんが旅行先で感じた幸せな瞬間はいつですか?
A. 私は天気の影響をとても大きく受けます。太陽が照りつけて大地を熱し、空には白くふわふわした雲が浮かんでいる時、この上ない幸せを感じます。

Q.書店の店主であり、ミュージシャンとしての今年の計画を教えてください。
A. 新しい本にときめいて、それを売って、店を掃除してきれいにして……同じことの繰り返しなのにこの仕事が新鮮に感じられるのは、それぞれ違った存在感を持つ人々がここを訪れるからでしょう。今年も変わらず、いつも通りに仕事をしながら人々を待ち、出会おうと思います。ミュージシャンとしては、フルアルバムを8月ごろに発売する予定です。

Q.最後に、ヨジョさんにとって旅行とは?
A. 頭の痛いことです。管理すべきことがたくさんあるからです。まず頭の中を管理しなければなりません。その次に体力を管理する必要があります。管理がうまくいけば、本当にそれだけで目を覚ました時から眠りにつくまでどこであってもよい旅行者になれると思います。そう思ってうなじに「Traveler」とタトゥーまで入れたのに、今も管理するのは大変です。私も、この記事を読む皆さんもよい旅行者になることを願います。人生は旅行です。比喩的な表現ではなく、本当に明確な事実なのです。

本屋無事 www.instagram.com/musabooks
 
July 2022 編集:鄭宰旭
写真:朴頭山

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  • July 2022
  • 編集: 鄭宰旭
  • 写真: 朴頭山
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