© 2022 Courtesy of Shepard Fairey/Obey Giant Art.
行動を起こせ。街で、ギャラリーで!
ストリートアートをアートマーケットに引き入れたシェパード・フェアリーの企画展が、韓国・ソウルのロッテミュージアムで始まった。アートに宿る善なる力を実感することができる展示だ。
「アートは平和と正義のための手段になり得ます。人権への脅威や権力の乱用に対し問いを投げかけることもできます」。
シェパード・フェアリー、2016年に韓国メディアとのインタビューで
Eyes Open, 2021 © 2022 Courtesy of Shepard Fairey/Obey Giant Art.
平和、正義、環境。こうしたスローガンとメッセージはアーティストにとっておなじみのモチーフだ。だがこれを効果的に具現化し、賛同と連帯を引き出すのはたやすいことではない。シェパード・フェアリーはメッセージによって人々を連帯に導く、誰よりも強い力を持つアーティストだ。「ビジュアルコミュニケーター」を自称するように、アートでの自身の人気を社会的な影響力へ広げるすべも知っている。
Obama Hope, 2008 © 2022 Courtesy of Shepard Fairey/Obey Giant Art.
オバマの「HOPE」
美術館でストリートアートを取り上げるのはさほど目新しいことではない。バスキアをはじめ、バンクシーやその他大勢のストリートアーティストが自身のメッセージをグラフィック作品で表現した。使う材料と技法に違いはあれ、彼らが伝えようとするメッセージは連帯、政治的な正しさ(ポリティカルコレクトネス)、平和、正義だった。シェパード・フェアリーは近ごろのムーブメントで先頭に立つアーティストだ。
OBEY Star, 2019 © 2022 Courtesy of Shepard Fairey/Obey Giant Art.
Make Art Not War, 2019 © 2022 Courtesy of Shepard Fairey/Obey Giant Art.
シェパード・フェアリーが自身の名前を世の人々に鮮やかに印象付けたのは、バラク・オバマ元アメリカ大統領が2008年の大統領選候補だった時期に制作したポスターだ。オバマ氏を支持していたシェパード・フェアリーがステンシル技法を用いて自主的に制作し街に貼ったものが、「HOPE」キャンペーンとして起用された。オバマ氏のキャンペーンポスターの中で最も人気を集め、オバマ氏のメッセージの象徴となった。
Shepard Fairey © 2022 Courtesy of Shepard FaireyObey Giant Art.
© 2022 Courtesy of Shepard FaireyObey Giant Art.
「自分のことをストリートアーティストと考えたことはありません。大衆に訴えるアーティストだと思っています」。
Damaged Wrong Path Mural © 2022 Courtesy of Shepard Fairey/Obey Giant Art.
メッセージの広がり
1970年にアメリカ南部のサウスカロライナ州チャールストンで生まれたシェパード・フェアリーは、アメリカの名門美術学校ロードアイランド・スクール・オブ・デザインでイラストレーションを専攻した。
在学中のある日、彼は新聞でフランスの伝説的な巨人プロレスラー、アンドレ・ザ・ジャイアントの肖像を目にする。これをモチーフにモノクロのステンシル技法で「アンドレ・ザ・ジャイアントには仲間がいる」と題したステッカー作品を制作した。作品はスケートボーダーのコミュニティーとグラフィティアーティストの間で広まり、アメリカ全土の都市でも知られるようになる。作品は1990年、人々を反応、観察させ、ステッカーの意味を考えさせる実験現象学的なキャンペーン「オベイ・ジャイアント」に発展する。
彼はその後も社会的なメッセージを込めたイメージをポスターやステッカーとして制作、公表し続け、世間の関心を集めた。それはオバマ氏の選挙キャンペーンポスター「HOPE」で頂点に達する。また衣料ブランドの「OBEY」を立ち上げ、ファッションを通じてもストリートアートの延長線といえる活動を並行。シェパード・フェアリーの影響力は強まる一方だ。
AK-47 Lotus, 2022 © 2022 Courtesy of Shepard Fairey/Obey Giant Art.
AR-15 Lily, 2022 © 2022 Courtesy of Shepard Fairey/Obey Giant Art.
平和や正義、環境といった社会的メッセージを込めてシルクスクリーン印刷でポスターとステッカーを生み出す彼は、アートと大衆のコミュニケーションを何より重視する。強烈なカラーコントラストと補色の効果が際立つ数々の肖像ポスターは、数十年前のベトナムや中国で社会主義体制の宣伝用につくられたポスターに似ていると評されることもある。だが、何より明確な言葉と強烈なイメージの組み合わせによって発信されるメッセージは、宣伝以上に響いてくるものがある。
彼は現在ロサンゼルスに在住し、多様なプロジェクトと作業に取り組んでいる。
ロッテミュージアムがシェパード・フェアリーの企画展「行動せよ!」
彼の作品はアメリカのロサンゼルス・カウンティ美術館やサンフランシスコ近代美術館、イギリスのビクトリア・アンド・アルバート博物館など、さまざまなミュージアムに所蔵されている。世界中の多くの都市からパブリックアートプロジェクトのオファーが舞い込み、進行中のプロジェクトもある。
社会的メッセージの強さだけでなく、今やカルチャーの一つの潮流をなすアーティストとしても認められるシェパード・フェアリーの企画展が7月29日、ソウル・蚕室のロッテワールドタワー内にあるロッテミュージアムで始まった。
「シェパード・フェアリー、行動せよ!EYES OPEN – MINDS OPEN」と題した企画展は、国内最大規模の展示となっている。ストリートアートを街なかで終わらせず、より広いアートマーケットに引き入れたシェパード・フェアリー。その初期作品から最新作まで約300点の代表作とともに壁画2点もお披露目した。
彼が作品を通じて伝えるメッセージはシンプルだ。「行動せよ!」
自由でいながら独自の揺るぎない哲学に触れることができるシェパード・フェアリーの企画展は、11月6日まで開催される。
企画展の開催に合わせ、ロッテホテルはシェパード・フェアリーとコラボレーションしたルームカードキー用ホルダーを用意した。シェパード・フェアリーのアイコンである星の中に描かれたオベイ・ジャイアントを中心に、装飾的な要素を散りばめた。ホルダーはシグニエルソウルをはじめ、ロッテホテルソウル、ロッテホテルワールド、L7弘大、L7江南、L7明洞、ロッテシティホテル麻浦、ロッテシティホテル金浦空港などロッテホテル&チェーンの韓国15拠点で年内いっぱい宿泊客に提供する。2023年6月30日まで、このホルダーをロッテミュージアムに持参すれば、同伴者1人まで観覧料が30%引きとなる特典も受けられる。
「シェパード・フェアリー、行動せよ! EYES OPEN – MINDS OPEN」
展示期間 2022年7月29日~11月6日
住所 ソウル市松坡区オリンピック路300 ロッテワールドタワー7階 ロッテミュージアム
問い合わせ先 +82-1544-7744
ホームページ www.lottemuseum.com
LOTTE MUSEUM / © 2022 COURTESY OF SHEPARD FAIREY/OBEY GIANT ART