ART & CULTURE

アコンチ・スタジオが設計した「木の上の、線になった家」

パブリックアートの都市、安養へ
韓国・ソウルの近郊、安養芸術公園の森を歩こう。世界的なアーティストの作品との思いがけない出会いが待っている。
ソウル市南西部とその南方の京畿道水原市を結ぶ京水産業道路は、国道1号のうち特に交通量が多い区間の一つだ。ソウルから京畿道の安養市と軍浦市を経て、水原市に至る。
安養市はソウル市南西部の南に隣接し、首都圏電鉄1号線が走る。安養での始発駅である冠岳駅の近く、冠岳山に連なる所にはかつて安養遊園地があった。1930年代の安養水泳場に始まった安養遊園地は、1960年代に首都圏を代表する観光スポット、そして避暑地だった。休暇シーズンには1日4万人以上の避暑客が訪れたという記述もあるが、人気はいつしか衰えた。時を経て、2005年から3年ごとに安養公共芸術プロジェクト(Anyang Public Art Project, APAP)が開催されるようになると、ここは安養芸術公園として生まれ変わった。
公園には金重業建築博物館があり、一帯の散策路にさまざまな造形物と建築物、アート作品が設置されている。市民の文化芸術への感受性を大いに刺激する役目を果たしている。

金重業建築博物館

建築家・金重業に出会う
安養芸術公園巡りは金重業建築博物館からスタートすべきだろう。近ごろでは知らない人もいるかもしれないが、金重業(キム・ジュンオプ、1922~1988)は韓国の現代建築史を語る上で欠かせない象徴的な存在だ。
少年時代の金重業は芸術的な感性に富み、詩と美術を愛した。美術教師から建築が詩と美術に一番近い分野と教えられ、その言葉に従って建築を学ぶことにした。日本で建築を専攻し、1950年代に渡仏。近代建築の巨匠ル・コルビュジエの事務所に入り最先端の建築の世界に身を置いた。韓国に戻ると、在韓フランス大使館や三一ビル、世界平和の門といったソウルを象徴する建物を設計した。

建築と祖国に対する金重業の愛情がにじむ。

金重業建築博物館は金重業が手掛けた柳柳産業安養工場の建物を活用している。はるか昔には、高麗を建国した王建の命で建てられた安養寺があった場所だった。安養という地名はこの安養寺に由来する。
柳柳産業安養工場は金重業が帰国後の活動初期に設計した作品で、建物と彫刻を組み合わせるなどの独創的な試みが見られるプロジェクトだった。工場内の施設として設計された建物のうち4棟が、金重業建築博物館や安養博物館などに改装され、使われている。
金重業建築博物館の本館では、建築にかけた金重業の生涯と代表作をじっくり見ることができる。博物館向かい側の特別展示館も多様な企画展を催している。今は「メディアアーキテクチャー:金重業、建築芸術に至る」を開催中だ。金重業の建築芸術の世界をデジタルメディアと先進技術により再解釈する韓国初の体験型の建築コンテンツ展示で、9月25日まで。

本館と特別展示館はさまざまな展示を企画している。

金重業建築博物館
住所 京畿道安養市万安区安養芸術公園路103番ギル4
ホームページ 金重業建築博物館

巡礼者の道を形象化したイェッペ・ハインの「鏡の迷路」

イ・ファングォンの作品「コピー屋さんの娘(ソンウン)」

イェッペ・ハインの「歌うベンチ」

森の中で対面するアート作品
安養芸術公園によって安養市はパブリックアート都市という名誉ある称号を得た。十数年にわたってパブリックアートプロジェクトに取り組み、街のあちこちに作品を設置するという都市は他に存在しないからだ。安養文化芸術財団が運営する安養公共芸術プロジェクトは3年ごとに開催され、安養の地形や文化、歴史などからインスピレーションを受けたアーティストがインスタレーションをはじめ、彫刻や建築、映像、デザインなど、それぞれの専門性を生かした作品を披露する。プロジェクトの歴代参加者の顔ぶれも多彩だ。アルヴァロ・シザ、アコンチ・スタジオ(ヴィト・アコンチ)、イェッペ・ハインといった名だたる建築家とアーティストが参加し、日本の著名建築家・隈研吾は建物でなく造形物を制作した。

アルヴァロ・シザが設計した安養パビリオン

安養パビリオンには安養公共芸術プロジェクトの作品の模型が展示されている。

金重業建築博物館の観覧を終え、道沿いを三聖山方面へ進む。最初に姿を見せるのはポルトガル出身の建築家アルヴァロ・シザが設計した安養パビリオンだ。安養芸術公園の拠点である安養パビリオンは、アルヴァロ・シザのシグニチャーといえる曲線と直線がぶつかり重なり合うコンクリート外壁が目を引く。どの角度からも決して同じ形態には見えない独特な構造となっている。山に向かう道の入り口付近に位置し、一帯の雰囲気にまとまりを与えるような役割を果たしている。

ヴォルフガング・ヴィンター & ベルトルト・ホルベルトの「安養箱の家」

イ・スンテクの「竜の尾」

隈研吾の「ペーパースネーク」

安養パビリオンを過ぎて道を渡ると、あちこちに設置されているパブリックアート作品と向き合うひとときとなる。ここからは足が赴くままに進んでもいいし、全体をぐるりと回ってもいい。ただし、関心を持たずに歩くだけなら、そこかしこにたたずむ作品が目に入らず通り過ぎてしまうかもしれない。
三聖山から公園に流れ込む谷川の中に、水を吹き出す造形物が見える。ベルギーのアーティスト、オノレ・ドゥオーの作品だ。さらに先を行くと、鉄の柱が鏡になったような作品「鏡の迷路」、プラスチックケースを積み上げて家らしき構造物に仕上げた「安養箱の家」が現れる。
韓国人アーティストの作品もある。人体比率をデフォルメした興味深い彫刻を手掛けるイ・ファングォンの作品や、長い瓦屋根の上部が地面からせり出すように設置して竜の尾に見立てたイ・スンテクの作品なども見てほしい。

展望台から眺める安養芸術公園

MVRDVが手掛けた展望台

展望台と野外公演場も独創的に
道を少しずつ上がっていくと展望台への表示板が現れる。MVRDVが展望台を設計した。MVRDVは自由な空想を具現化する革新的な建築と都市設計で知られるオランダの建築家集団だ。彼らがこれまで手掛けてきた、意図したかのような型破りな建築物の造形美がこの展望台からも感じられる。展望台の存在は三聖山の等高線を延ばして山の高さを拡張しつつ、ごく自然に山に溶け込んでいる。階段でなくスロープになっており、緩やかな登り道を進む感覚だ。子どもやお年寄りも歩きやすく、周りを見渡しながら進むうちに上までたどり着く。
展望台を下って最初の渓谷の方に向かうと、アコンチ・スタジオ(ヴィト・アコンチ)が設計した「木の上の、線になった家」に突き当たる。駐車場の上にトンネル型の通路を設け、野外公演場とつなげた。複雑ながら実用的な印象の構造物は、いくつものミュージックビデオとドラマに登場して話題を集めた。
ソウル・蚕室のシグニエルソウルとソウル・小公洞のロッテホテルソウルから安養芸術公園まではいずれも車で40分ほど。ソウルの街なかから1時間以内の距離で森と渓谷、アートと建築に触れることができる所といえば、ここ安養芸術公園の他は思いつかない。
この夏から安養芸術公園のAPAP作品ツアーが再開された。せわしいソウル市内からしばし離れ、森の中でのアート散策に繰り出してみてはいかがだろう。

安養パビリオン
住所 京畿道安養市万安区芸術公園路180
電話 +82-31-687-0548
ホームページ 安養パビリオン, 安養芸術公園マップ

ANYANG ART PARK / VIDEO BY PARK SUNGYOUNG

September 2022 編集:鄭宰旭
写真:朴誠永

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  • September 2022
  • 編集: 鄭宰旭
  • 写真: 朴誠永
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