ART & CULTURE

大田の複合文化空間
韓国の地図の中心にある都市、大田の情緒と文化が息づく複合文化空間を訪れた。
「知れば知るほど見えてくる」という美術学者、兪弘濬教授の言葉は地域文化や旅行にもそのまま当てはまる。旅行先についての歴史的・地理的・社会的情報を知れば、より意義深い旅になる。大田旅行といえば何を連想するだろうか?儒城温泉に代表される大田への旅で、見物や体験できることがさらに増えた。大田の情緒と文化を取り入れて生まれた、さまざまな形の複合文化空間を訪れた。
タラトリウムとフリッツ・ハンセン、アソリーヌがある空間
近ごろ大田で人気を集めている地域がいくつかある。ロッテシティホテル大田がある道龍洞一帯もその一つだ。科学技術の研究拠点、大徳研究団地と国立大学の韓国科学技術院(KAIST)に近い道龍洞は、アートアンドサイエンスをテーマにした百貨店や小さな山、住宅街、素敵なカフェがたたずむ地域だ。

リブリスホームに展示されている草間彌生のカボチャのオブジェ

フリッツ・ハンセンのショールーム

ここに、大田では珍しいアートブックを扱う書店とさまざまな雑貨を売るセレクトショップ、そしていま韓国で最も人気のある海外デザインブランド家具が並ぶ空間ができた。その名はタラトリウム。建築資材などを扱う「空間タラ」が手掛ける複合文化空間だ。
タラトリウムは地下1階、地上5階建てでグレーの外壁の建物だ。1、2階はいま最も人気のあるデザイン家具ブランド、フリッツ・ハンセンのショールームで、3階には世界3大アートブック出版社、アソリーヌの本を集めたブックラウンジ兼カフェ、リブリスラウンジがある。以前からアソリーヌの本が好きだったタラトリウムの代表は、ソウルに行くたびにアソリーヌのフラッグシップストアを訪れており、大田にもアートブックを紹介する場所があればと願ってこのような空間を作った。

タラトリウムの全景

各階の階段に飾られた美術作品

4階にはデザイナーの雑貨や照明、さまざまなオブジェを集めたリブリスホームがあり、草間彌生のカボチャのオブジェやキム・ウンジュのガラスと石でできた鳥、インゴ・マウラーの照明などを販売している。地下にはギャラリーとビンテージ家具、照明などを集め、集いの場や教室としても活用する予定だ。各階をつなぐ階段の壁には、雰囲気に合うオリジナルの美術作品が大きく飾られている。

アソリーヌのアートブックの雰囲気を生かした空間

貴重なスペシャルパッケージのアートブックも扱っている。

タラトリウムを作ったのは、空間タラのキム・スジン代表だ。長年にわたり建築木材や仕上げ材などを流通させてきた目利きの美的感覚で、ふるさとの大田にもソウル顔負けのライフスタイルショップを作ろうとした。おかげで、タラトリウムの随所にある雑貨やオブジェはソウルと変わらない感性を届けている。
大田に対する愛情と期待から始まったタラトリウムを訪れる人が増えている。雨が降る平日の昼間にもかかわらず、お気に入りのオブジェや雑貨を購入し、アートブックが並ぶ中でコーヒーを飲みながら時間と空間を楽しむ訪問者が多い。道龍洞の閑静な住宅街にあるタラトリウムという名前の空間がもたらした変化は、小さいながらも明確だ。

住所 大田市儒城区大徳大路572
電話 +82-507-1470-8114
インスタグラム @taradept
ヘレディウム、近代の歴史と現代の芸術が出会う場所
大田の仁洞には、日本による植民地時代に東洋拓殖株式会社の大田支店があった。当時は全国9地域に支店が置かれていた同社の建物は、現在釜山と木浦、大田支店のみが残っている。植民地支配からの解放後、建物は大田逓信庁と大田電信電話局として使われた。以降は民間商業施設として利用されていたこの建物は、財団法人CNCITYマウムエネルギー財団による約2年間の修繕工事を経て、建築から100年を迎えた2022年に展示とクラシック公演のための複合文化空間に変身した。それがヘレディウム(Heredium)だ。

ⓒ Heredium

歴史性が表れたヘレディウムの外観 ⓒ Heredium

シンプルで整った雰囲気の展示スペース ⓒ Heredium

建物には時間の歴史性と空間の用途が共存する。大田駅に近い仁洞にあるヘレディウムは、時間の痕跡が残る建物の歴史性を保ちながらも、空間の用途をさまざまに変化させる複合文化空間だ。
ヘレディウムは「遺産として受け継いだ土地」という意味を持つラテン語だ。ここを文化空間として造成し、近代文化遺産の中で芸術的インスピレーションと感動を伝える文化活動によって未来遺産を作っていくというビジョンを定めた。建物を壊すことなく、考証をもとに当時の資材や要素をそのまま再現したり、現代の材料と組み合わせたりしたのもそのためだ。外壁タイルや正面のファサード、木枠の窓、天井など、原型を保ちながらも現在の用途に合わせて使用している。

ⓒ Heredium / Wer jetzt kein Haus hat, baut sich keines mehr, 83x288x183cm(32,68x113,39x72,05in), 118 laterite and straw bricks, 2022 / Photo by George Poncet

アンゼルム・キーファーの韓国初個展が開かれているヘレディウム ⓒ Heredium

アンゼルム・キーファーの姿 ⓒ Anselm Kiefer / Photo by Charles Duprat

ヘレディウムでは美術展示とクラシック公演を並行して行っている。毎月クラシックのシリーズ演奏会を開き、企画展示も定期的に行っている。昨夏にはヘレディウムのクラシックシリーズイベントとしてサマーミュージックフェスティバル&マスタークラスを開催し、リサイタルやいくつかのレッスンが行われた。9月からの展示には驚かされる。ドイツ現代美術の巨匠、アンゼルム・キーファーの展示が来年1月まで行われる予定だ。タイトルは「秋(Herbst)」。アンゼルム・キーファーの韓国初の個展で、彼の作品が大田のギャラリーで見られるとは予想もできなかった。今回の展示で公開されるのは、詩人マリア・リルケの詩からインスピレーションを得てアンゼルム・キーファー独自の視線で描いた作品だ。
建物の裏側には、ヘレディウムのムードをそのまま持ち込んだようなヘレディウムカフェもある。ソウルからも釜山からも2、3時間で行ける大田。アンゼルム・キーファーが描く秋を感じ、コーヒーを1杯飲んでも十分に家に帰ることができる時間だ。
それが大田の持つメリットでもある。

住所 大田市東区大田路735
電話 +82-70-8803-1922
ウェブサイト heredium.art
聖心堂文化院、大田旅行の最後の目的地
近ごろオンラインで話題になっている大田旅行に関する話題の中心は、老舗パン屋の聖心堂だ。「起承転聖心堂」「いくら大田旅行が面白くなかったとしても、最後に聖心堂に立ち寄れば良い旅になる」と言われるほどで、聖心堂は単なるパン屋にとどまらない場所だ。
大田地下鉄の中央路駅前は「聖心堂タウン」と呼んでも差し支えないほど、聖心堂の店舗とそこを訪れる人々でにぎわっている。駅を出て100メートルほど歩くと、最初に見えるのがイチゴの生クリームケーキで有名な「聖心堂ケーキブティック」だ。その隣には聖心堂本店が、向かいの建物には持ち帰り用かき氷を売る「聖心堂昔ながらの味」がある。ここから路地を少し入ると「聖心堂文化院」に到着する。

4階にあるギャラリーラルに展示されたイラスト

3階のメアリラウンジではさまざまな講演やレッスンが開かれる。

朝鮮戦争当時、北朝鮮の興南埠頭から米貨物船メロディス・ビクトリー号に乗って韓国に到着した避難民の家族が大田に定着し、配給された小麦粉で蒸しパンを作って売ったのが聖心堂の始まりだった。かの有名な揚げそぼろパン、ニラパンにかき氷、生クリームケーキまで、聖心堂を単なるパン屋を越えて大田の看板スターにした製品を味わうためにいつも長い列ができた。
テレビ番組でも何度も紹介されたほど有名なこのエピソードを基に、聖心堂文化院は聖心堂の歴史と文化、大田の情緒を共有し、キャラクターグッズも販売している。5階建てのこの建物は、フロアごとにそれぞれ異なるイベントが行われるスペースとして利用されている。

聖心堂文化院の入り口

2フロアからなるギャラリーラル

聖心堂の来店客に人気の持ち帰り用かき氷

1階と2階にある「メアリ(こだま)商店」は、聖心堂のキャラクターグッズや記念品、雑貨などを販売し、簡単なお茶やデザートも楽しめる空間だ。代表的な製品である揚げそぼろパンを揚げた廃油で作るせっけんや垂れ幕で作ったバッグなど、残った材料や製品を再利用したリサイクル製品は、社会と環境に対する聖心堂の哲学を表している。キャラクター製品は昔懐かしい雰囲気を醸し出しながらも、田舎っぽさや安っぽさはなくかわいらしい。メアリ商店と地下のメアリ倉庫は、聖心堂でテイクアウトしたパンをお茶と一緒に食べられるカフェテリアとしても利用されている。3階の「メアリラウンジ」では、さまざまな講演やレッスンなどが行われる。4、5階の「ギャラリーラル」では芸術家の展示や企画展を行っており、10月にはステンドグラス作家でカトリック司祭でもあるキム・インジュン神父の個展「光の指向」が開かれている。
パン屋が地元の外食文化を越えて旅行文化にまで影響を及ぼす姿が見たいなら、大田の聖心堂を訪れてみよう。

住所大田市中区中橋路73番ギル11
電話+82-1588-8069
ウェブサイト www.sungsimdang.co.kr

大田での滞在:ロッテシティホテル大田
大田駅から車で約10分の場所にロッテシティホテル大田がある。18階建て、計306室の客室を持つロッテシティホテル大田では、最上階にあるビュッフェレストラン「シーカフェ(C’café)」で美しい景色を見ながら多彩な料理を味わうことができ、夜には居心地のよい客室で夜景で有名なエキスポ橋を見ながら休息を楽しむことができる。

住所 大田市儒城区エキスポ路123番キル33
電話 +82-42-333-1000
ホームページ www.lottehotel.com/daejeon-city
October 2023 編集:鄭宰旭
写真:金晙

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  • October 2023
  • 編集: 鄭宰旭
  • 写真: 金晙
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