ニューヨーク・マンハッタンのグランド・セントラル駅から列車で1時間半ほど北上すると、ビーコン(Beacon)という都市が現れる。人口約1万5000人の小都市だ。現代美術の愛好家たちが美しいハドソン川を横目に静かな都市へと向かうのは、そこにディア・ビーコン(Dia:Beacon)があるからだ。ディア・ビーコンはニューヨークを基盤に活動するディア芸術財団(Dia Art Foundation)が設立した美術館で、製菓会社のナビスコが1929年に建てたパッケージ印刷工場を改造して2003年にオープンした。
Richard Serra, installation view at Dia:Beacon. ⓒ Richard Serra/ARS, New York - SACK, Seoul, 2018. Photo: Bill Jacobson Studio, New York. Courtesy Dia Art Foundation, New York.
François Morellet, No End Neon, 1990/2017. Dia:Beacon, Beacon, New York. ⓒ François Morellet / ADAGP, Paris - SACK, Seoul, 2018. Photo: Bill Jacobson Studio, New York. Courtesy Dia Art Foundation, New York.
ディア芸術財団の審美眼
1974年にフィリッパ・デ・メニル(Philippa de Menil)とハイナー・フリードリヒ(Heiner Friedrich)、美術史学者のヘレン・ウィンクラー(Helen Winkler)が設立したディア芸術財団は、世界的に非常に大きな影響力をもつ現代美術機関の一つだ。財団は作家が規模にとらわれない作品制作ができるよう手助けするために設立され、作家の後援や作品の所蔵などを通じて現代美術の発展をリードしてきた。ディア・ビーコンに展示された作品のほとんどは、ディア芸術財団が1960年代から今日まで収集した所蔵品だ。そのため、ディア・ビーコンを訪れること自体が財団の哲学と審美眼を確認することでもある。 ディア芸術財団はランドアートの代表作を所蔵し、管理していることでも有名だ。代表的な作品に、ニューメキシコの広大な砂漠にあるウォルター・デ・マリア(Walter de Maria)の「ライトニング・フィールド(The Lightning Field)、ユタ州のグレート・ソルトレイクにあるロバート・スミッソン(Robert Smithson)の「スパイラル・ジェティ(Spiral Jetty)」などが挙げられる。