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10月には済州島のタチウオ
今年は済州島でタチウオが豊漁だという。より多くの人が済州の銀色に光るタチウオを楽しむことができるということだ。
2020年夏、韓国は雨の日が多かった。6月から8月までうんざりするほど降り続いた雨は、台風が過ぎ去ってからようやく止んだ。十分な日照量を確保できなかったせいで秋の農産物の収穫量は楽観視できない状況だ。しかし、海からはうれしい知らせが届いた。今年の4~6月期の済州島の漁業生産動向は昨年よりも大きく増加した。4~6月期の済州島の漁業生産量は総2万2820トンで、前年同期と比べ3175トン、16.2%増加した。漁業生産量の増加に最も大きく寄与した魚はタチウオ(5641トン)だ。昨年より59%も増えたそうだ。カタクチイワシ(4169トン)とニベ(270トン)の漁獲量も多く、養殖魚であるヒラメやイシダイ、アワビ類などの生産も大きく増えた。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いてくれれば、済州島に秋のグルメ旅行に行くのも良さそうだ。もちろん宅配で自宅で安全に楽しむこともできる。

暖流の魚であるタチウオが秋においしくなる理由
暖流性魚類であるタチウオは、暖かい海域であればどこにでも生息する。北アフリカから中東、南シナ海、韓国や日本の近海に至るまで、生息する海域は非常に広い。比較的陸地から遠い場所を好むが、産卵時期である8∼9月には浅い海にやってくる。タチウオの旬は夏だとも秋だとも言われるが、どちらも一理ある。卵を抱いているのは夏だ。産卵した後は栄養を蓄える習性があるため身に甘みが出る。しかし、以前と比べタチウオの漁獲量はかなり減り、7月はタチウオの禁漁期に指定されている。今は「タチウオの旬は10月」と言うのが「正しい」だろう。
もちろん以前とは違い、現在は冷凍技術が発展し海外からも輸入できるようになったため、いつでもタチウオを食べることができる。済州島での漁獲量が減ると、セネガルのタチウオが大量に輸入され、アラブ首長国連邦の中東タチウオやフィリピン産の南太平洋タチウオまでが私たちの食卓に上るようになった。文才もあるシェフのパク・チャンイルは「今日のメニューは旬の食べ物です(原題)」という本で、イタリア留学時に「安いから地中海産のタチウオをうんざりするほど食べた」と告白している。

では、どこで獲れたタチウオがおいしいものなのか。難しい質問だ。「身土不二(その土地の人にはその土地の農産物が良く合うという意味)」という言葉の通り、韓国人の口には韓国の海で獲れたタチウオが一番おいしく感じられるだろうが、世界中の人々全てに共通する答えではないだろう。しかし、外国産のタチウオと韓国産のタチウオを区別する方法はある。韓国の主なタチウオの産地は済州島や釜山、麗水などの南海岸だ。済州島の東側はもう日本だ。近いので韓国のタチウオと日本のタチウオは同じ種類とされる(もちろん同じと言っても違いはある)。
ほかのタチウオは多くが「南方タチウオ」だ。南方タチウオと韓国のタチウオの違いを説明する前に、まず韓国のタチウオを見てみよう。

タチウオ百科
韓国のタチウオは銀タチウオ、墨タチウオ、黒タチウオに分けられる。しかし、韓国の海で獲れるタチウオは色が違うだけで同じ種のものだ。タチウオは水深0∼500メートルの間に生息している。最も深い水深で見れば深海魚に相当するのだが、私たちが口にするタチウオは主に水深100メートルほどで獲れるものだ。
銀タチウオは釣り上げるため体表が傷まず銀色に輝く姿をしている。きらきらと光る銀色の体表は見た目が良いだけでなく、新鮮さを維持するのにも役立っている。見た目も良く新鮮なため高価なのは当然のこと。そのため、新鮮で厚みのある済州産の銀タチウオを味わうためにはそれ相応の投資が必要だ。墨タチウオは墨色、黒っぽい色をしている。もともとの色が黒いのではなく、網の中で暴れて体表が傷ついて黒くなったものだ。海の深い場所に生息している種類なので銀タチウオよりも当然しっかりとしている。墨タチウオは銀タチウオよりも口が大きく歯も鋭い。尾びれがないのも墨タチウオの特徴だ。墨タチウオは銀タチウオよりもありふれている。だからと言って味が落ちるわけではない。黒タチウオも釣れるのだが、体表がもともと黒い色をしているタチウオのことを指す。釜山地域でよく獲れるのだが済州島でも時々獲れる。
「プルチ」もタチウオの一種だ。プルチはタチウオの稚魚で、ぱっと見ただけではシラスと間違えるかもしれない。プルチは天日干しして調味料であえて食べる。タチウオの身は成長しても柔らかい。ということは稚魚であるプルチは言うまでもないだろう。じゃこ炒めとは違い、プルチは火を通した瞬間、身が崩れるように潰れてしまう。そのため、天日で干して食べる直前に和えるのだ。プルチの和え物は珍味であるが最近は口にするのが難しい。稚魚を保護しなければならないのでシラスと一緒に獲れた少量のプルチだけしか口にすることができないためだ。

目を見るだけで分かる
韓国の海で獲れるタチウオでも生息地や生息している水深、獲り方によって名前が変わることを考えると、輸入のタチウオはその性格上さらに違いが出るのも当然だ。韓国のタチウオの目は白目の上に黒目があるのだが、外来種である南方タチウオの目は黄色い。国産のタチウオの胸鰭は鮮度のよいときは銀色で時間が経つにつれ薄い黄色に変わっていくが、輸入のタチウオの胸鰭は薄い黄色から濃い黄色に変化する。
輸入産の最も大きいメリットは韓国産より大きいということだ。大きいので国産のタチウオにはあまり見られない人間の歯のような形の骨がよく見つかる。輸入のタチウオの身をほぐしていると人間の犬歯や奥歯のような形の骨があることがある。タチウオの部位によって見つかる骨の形は違う。胴体の部分の骨は犬歯、しっぽの方の部分の骨は奥歯のような形をしている。タチウオは肉食魚であるため人間を食べたのではないかと驚く人もいる。しかし、そんな心配はいらない。水深が深いところに生息しているタチウオは、胸びれと尾びれのあたりの一部の身が石灰質化して骨のように変化する。これを「耳石」と言うが、海の深さに耐えるための役割をしていると思われる。

伝統の庶民の魚から高級食材へ
今は高級魚として扱われているが、もともとタチウオは庶民の食べ物だった。朝鮮後期の実学者、徐有榘(ソ・ユグ)は魚に関する本「蘭湖漁牧志」で、「節約したければ塩をしたタチウオを食べろ」とつづった。タチウオが安い魚だったことが分かる内容だ。
宮廷や官庁に各種の陶磁器を納めていた職人の池圭植(チ・ギュシク)が1891年から1911年までの20年間を記録した「荷齋日記」は、朝鮮後期の風俗を知ることのできる重要な資料である。それによると、酒のつまみとしてのタチウオの値段は1両だった。当時、冷麺やマクワウリの値段が1両で、香典の金額相場が5両だったことを踏まえれば、タチウオは高いものではなかったことが分かる。
状況が変わったのは1990年代以降だ。1980年代まではタチウオは庶民の食べ物として人気があった。しかし、1980年代以降漁獲量が少しずつ減り値段が上がり始めると、アフリカや中東、南太平洋のタチウオが私たちの食卓に上るようになった。全ての魚類が自身の体に適した水温を求めて移動するが、タチウオの場合はさらにその傾向が強いようだ。朝鮮王朝時代には季節によって獲れる地域は違っていたが、朝鮮半島のどこの海でもタチウオが獲れていた。1980年代以降減る一方だったタチウオの漁獲量が2010年代後半からだんだんと増えているのは、水温に変化があったからだ。焼いて良し、煮て良し、汁物にして良し。どんな食べ方をしてもおいしいタチウオは正に「ごはんどろぼう」だ。たんぱく質、脂質、特に必須アミノ酸とビタミン、無機質を多く含み、カルシウムやリンなども豊富で女性やお年寄りの骨の健康にも役立つ。不飽和脂肪酸であるDHAは成長期の子どもたちの頭脳の発達に良く、オレイン酸は動脈硬化などの血管疾患のある患者にも良い。10月の済州タチウオが待たれる理由だ。
October 2020 編集:鄭宰旭
文:李重翰

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  • October 2020
  • 編集: 鄭宰旭
    文: 李重翰
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