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ニューヨークへ音楽の旅、バイナルレコードのショップを巡る
世界のどこにいようと、あなたは今、再び熱を帯びるバイナルレコードのブームを肌で感じているはずだ。昔からレコードショップが多いことで知られるニューヨークも例外でない。
私たちは普段、バイナルレコード(Vinyl Record)をLPと呼んでいる。アメリカのドキュメンタリー「Vinyl Nation」(2020)は、浮き沈みの激しかったこのバイナルレコードの歴史にスポットライトを当てた。フィルムの中盤、2008年に始まった「レコードストアデイ(Record Store Day4月第3土曜日)」の話が出てくる。バイナルレコードがCDに次いでMP3にも追いやられ底辺であえいでいた当時、独立系レコードショップの文化的な機能をよみがえらせるという趣旨で、アメリカのいくつかのレコード店オーナーたちが発案した。

ミュージシャンと意気投合し、レコードストアデイと称してこの日に店頭でしか購入できないリミテッドエディションのバイナルとCDをつくった。店内ではミュージシャンによる生演奏も行われた。世界的なバンドのメタリカとザ・ホワイト・ストライプスも参加した。今やその影響力を世界中に及ぼすまでに浸透したレコードストアデイが、バイナルレコードにターニングポイントをもたらした瞬間だった。
アメリカのパンクロックとラップ、ヒップホップを誕生させ、伝説的なジャズミュージシャンが活動してきたニューヨーク。この特別な音楽の街を生き抜いたレコードショップこそ、バイナルレコード文化の生ける歴史といえる。
ジャズファンならぜひとも立ち寄りたい「ジャズレコードセンター」

© Ken Micallef

ニューヨークのチェルシーにあるジャズ専門店「ジャズレコードセンター(Jazz Record Center)」。38年にわたり店を切り盛りしてきたオーナーのフレデリック・コーエン(Frederick Cohen)は、最近のバイナルレコード復活の動きについて興味深い意見を述べる。「ヒップホップDJがバイナルでサンプリングしていなかったら、今のように関心を集めることはなかったろう」と。クラブでバイナルレコードを初めて目にした若者たちが、その独特なオーラに魅せられたのだ。おかげで彼の店にも、18歳から30歳までの若いジャズファンが立ち寄るようになった。

© Ken Micallef

© Ken Micallef

店は一般的な小売店のように通りには面しておらず、住居と商業の複合ビルの8階にある。このユニークな立地のために、専門ライブラリーやアーカイブセンターを訪れるような気分になるのかもしれない。経済的なメリットから選んだ場所だったが、今はそれまでもが1983年開業という年輪を重ねた店の持ち味となっている。バイナルレコードをはじめ、CDやDVD、雑誌・書籍など、ジャズに関するあらゆるアイテムがそろう中での一番の目玉は、ジャズ専門レーベルのブルーノート・レコード(Blue Note Records)が発売したバイナルレコードだ。世界中のジャズファンからのひっきりなしの問い合わせに、オーナーは明快なガイドが必要と考え、自ら本を書いた。タイトルは「ブルーノート・レコード オリジナル・プレッシング・ガイド(Blue Note Recordings: A Guide for Identifying Original Pressings)」

© Ken Micallef

フレデリックの説明によると、アナログ録音したオリジナル盤と復刻盤のバイナルレコードこそが最上の音色を持つ。だがメジャーをはじめとする多くのレーベルは、アナログ音源をデジタル化し、そのデジタルファイルを用いてバイナルレコードを制作する。こうしたバイナルレコードは音色が劣るだけでなく、CDと何ら変わるところがない。大勢の人がこうした違いを知らないまま、バイナルというだけで音色が素晴らしいと思い込んでしまうことを彼はとても残念がっている。
個人的に好きなミュージシャンを尋ねたところ、相変わらずジャズベーシストのチャールズ・ミンガスが好きで、彼のアルバムを集めているという答えが返ってきた。ほかにも、マイルス・デイビスのアルバム「Workin’ With the Miles Davis Quintet」(1960)に収録された「It Never Entered My Mind」と、ジェリー・マリガンとチェット・ベイカーによるライブアルバム「Carnegie Hall Concert」(1974)を好んで聞くという。

住所 236 West 26th Street Room 804 New York
電話 +1-212-675-4480
ホームページ www.jazzrecordcenter.com
ニューヨークらしさを満喫できるランドマーク、「アカデミーレコーズ &CDs、アカデミーレコーズ、アカデミーレコードアネックス」

1977年に開業した「アカデミーレコーズ&CDs(Academy Records & CDs)」はニューヨークのレコード業界のシンボル的な存在だ。オーナーのジョセフ・ガヌン(Joseph GaNun)は、初期はレコード店というより小ぎれいな古本屋に近かったと回想する。中古LPの取り扱いが増えるにつれ、音楽の比重は次第に大きくなり、今のレコードショップの形に落ち着いた。店があるマンハッタンのフラットアイアン・ディストリクトは19世紀後半から20世紀初めにできた建物がきちんと保存されているエリアで、店のアナログな雰囲気と相まって時の流れをしばし忘れさせてくれる。

フラットアイアンの店舗のほかに、イーストビレッジには2号店にあたる「アカデミーレコーズ(Academy Records)」、ブルックリンのグリーンポイントにも3号店の「アカデミーレコードアネックス(Academy Record Annex)」を構えているのだが、両店は1号店とはオーナーが違い、店の趣きも異なる。現在グリーンポイント店のマネージャーを務めるコリー・フィアマン(Cory Feierman)は、2008年にイーストビレッジ店で働き始めた。彼の話では、各店が今も健在なのは来店のたびに新たな音楽に出会えるよう手助けする魅力的な音盤セレクションと合理的な価格のおかげだ。

1号店がクラシックからジャズ、ロックなどを幅広く扱うとしたら、2号店と3号店はパンクロック、メタル、ソウル、ラテンミュージックに、より重きを置いている。もちろんジャズも外せない。それぞれの店の趣向を代表するアルバムとして、イーストビレッジ店では地元出身のパンクロックグループ、ラモーンズの「Rocket to Russia」(1977)とニューヨークのラテンソウルスタイルを生み出したジョー・バターン(Joe Bataan)の「Gypsy Woman」(1968)、グリーンポイント店ではイギリスの4人組パンクグループ、プリテンダーズ(Pretenders)のデビュー盤「Pretenders(愛しのキッズ)」(1980)とジャズ・サックス奏者ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の「A Love Supreme」(1965)が挙げられる。

アカデミーレコーズ &CDsAcademy Records & CDs
住所 12 West 18th Street New York
電話 +1-212-242-3000
ホームページ academy-records.com

アカデミーレコーズ(Academy Records / アカデミーレコードアネックス(Academy Record Annex
住所 415 E 12th Street, New York / 85 Oak Street, Brooklyn
電話 +1-212-780-9166/ +1-718-218-8200
ホームページ academy-records.com
ディスコとハウスミュージックがあるヒップなバイブ、「スペリオールエレベーションレコーズ」

バイナルレコードによる最上の音楽鑑賞の体験を象徴するかのような店名を持つのが「スペリオールエレベーションレコーズ(Superior Elevation Records)」だ。ディスコとソウル、ハウスのバイナルを専門的に取り扱う。店はブルックリンのイースト・ウィリアムズバーグにある。オープンは6年前と、ほかの店に比べれば間違いなく新参で、それだけ若々しく、新しい試みにもためらいがない。DJを招いて店内でDJスクールを運営するかと思えば、ホテルやブルワリー、ブランドなどのイベント向けに音楽キュレーションのサービスも提供する。さらに週末には、DJを迎えたパーティーを店内で催す。くつろげる雰囲気と納得のレコードセレクションも常連に愛される理由の一つだ。

ここのオーナー、トム・ノーブル(Tom Noble)は実に長い歳月をバイナルレコードと共に過ごしてきた。2001年に兄と一緒にウィスコンシン州ミルウォーキーで、レゲエとフレンチポップのレコード復刻に向けたレーベルを設立。その後ロサンゼルスに移ると、しばらくは主にインターネット上でレコードを販売した。現在の店名もまた、レコード復刻のレーベルのためにつけた。より本格的に楽しもうとニューヨークに店を構えたのだ。同店は2015年のレコードストアデイに合わせてオープンし、この日のパーティーにはDJでプロデューサーのジャスティン・ストラウス(Justin Strauss)や、ソウル・クラップ(Soul Clap)メンバーのエリ・ゴールドスタイン(Eli Goldstein)らが参加してお祝いムードを盛り上げた。

住所 100 White Street, #B, Brooklyn
電話 +1-718-360-1965
ホームページ www.superiorelevation.com
実験的なダウンタウンミュージックのビジョンをつないでいく「ダウンタウンミュージックギャラリー」

© Scott Friedlander

マンハッタン橋とブルックリン橋を一目で見渡せるチャイナタウン。店はものさびしい街角の地下にある上、通りに出した看板も今はグラフィティーに隠れて見えない。それこそ知る人ぞ知るアンダーグラウンドの世界だ。「ダウンタウンミュージックギャラリー(Downtown Music Gallery)」へようこそ。
店内には、オーナーのブルース・ギャランター(Bruce Gallanter)の言葉を借りるなら「奇異な(weird)」音楽が流れる。この店が推す「ダウンタウンミュージック」だ。ブルースによると、ダウンタウンミュージックは特定の形式やスタイルにとらわれない。すべての可能性に開かれた実験的な形態を取っており、プログレッシブ・ロック、ハードコアパンク、アーバン・ジャズ、モダン・クラシックなど、さまざまなジャンルを網羅する。1970年代から1990年代までニューヨークで盛り上がり、今も熱烈なマニア層にしっかりと支えられている。その命脈を受け継ぐのがダウンタウンミュージックギャラリーだ。世界中の数多くのミュージシャンに影響を与えたことで知られる作曲家でミュージシャンのジョン・ゾーン(John Zorn)は、ここと共に人生を歩んだ。難解と言われがちな彼の音楽は、現代音楽を中心とする弦楽四重奏団クロノス・クァルテット(Kronos Quartet)やジャズミュージシャンのパット・メセニー(Pat Metheny)らにも演奏されてきた。

© Scott Friedlander

毎週日曜日の夕方、店はミュージシャンのステージに変わる。30年前に店を始めたころから一度も欠かしたことがない(新型コロナウイルス感染症のパンデミックを除く)。公演のレパートリーを尋ねると、実験性を追求するミュージシャンならジャンルにかかわらず場所を提供するとのこと。公演はすべて無料で、観客は15人まで収容可能。毎週発行しているニュースレターもまた、伝説的な歴史を持つ。音楽マガジンを凌ぐ丁寧なアルバムレビュー、関連ミュージシャンのニュースが満載で、その情熱たるやラブレターにも引けを取らない。音楽にインスパイアされ新境地を開きたいと考えるすべての人に宛てたラブレターなのだ。

住所 13 Monroe Street New York
電話 +1-212-473-0043
ホームページ www.downtownmusicgallery.com
 
ニューヨークでの滞在: ロッテニューヨークパレス

ロッテニューヨークパレスは、19世紀末に建てられた建築家ヘンリー・ビラードの邸宅と、55階建ての現代式タワーが共存するホテルだ。アメリカの人気ドラマ「ゴシップガール」や数多くの映画に登場し、ニューヨーク旅行で欠かせない観光スポットに定着した。909室の客室と15世紀のイタリアの大聖堂をモチーフにした美しい庭園があり、レストラン・ビラードや高級サロンのレアリティーズ、カクテルバーのトラブルズ・トラストといったレストランとバーも備えている。

住所 455 Madison Avenue at 50th St., New York
電話 +1-800-804-7035
ホームページ www.lottenypalace.com
April 2021 編集:鄭宰旭
文:韓叡俊
資料提供: Jazz Record Center, Academy Records & CDs, Superior Elevation Records, Downtown Music Gallery

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  • April 2021
  • 編集: 鄭宰旭
    文: 韓叡俊
  • 資料提供:
    Jazz Record Center, Academy Records & CDs, Superior Elevation Records, Downtown Music Gallery
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