「高尚なヒーリングカルチャーに飽きた人々」のせわしない日々にバイタリティーを与え、リフレッシュさせたい。そんな考えで創業したジェイソン・グッドマン（Jason Goodman）とトラビス・タルマッジ（Travis Talmadge）が、ニューヨークを拠点とする建築スタジオのヴェローナ・カーペンター・アーキテクツ（Verona Carpenter Architects）と手を組んだ。かつてブルックリン・ボトリング・カンパニー（Brooklyn Bottling Company）とドクター・ブラウン・ソーダ（Dr. Brown’s Soda）が使っていたソーダ製造工場をスパに生まれ変わらせたのだ。天井がぽっかり空いた構造の地下フロアの一部をふさいでフロアを仕切り、インダストリアルなレンガ造りは最大限生かした。そして世界中の入浴文化からインスピレーションを得て、フィンランド式サウナやロシア式のコールドプール、トルコが起源のスチームルームなどを設けた。
1階で受け付けを済ませて地下フロアのスパへと向かう途中はまるで、ひそかに営まれていたバー、スピークイージーを訪れる気分にさせる。巨大な熱帯植物が茂る狭い通路を抜けた先、透明なガラスの床の向こうに見える湿気にこもったスパは、別世界に足を踏み入れる直前の神秘的な期待すら抱かせてくれる。スパゾーンに入場すると真っ先に目に入る壁画は、ここのシグネチャールック。ブルックリンを拠点に活動するアーティスト、アミット・グリーンバーグ（Amit Greenberg）が古代ローマの温泉からインスピレーションを得て、入浴する人々を表現した。

広さ約600平方メートルの地下のスパには、古代ユーロピアン・スパ様式を手本にした浴槽とサウナが設置されている。約40度のお湯と約11度の水風呂、あるいは体温に近い約34度のぬるめのお湯につかるのはもちろん、トルコの入浴文化にならった大理石の岩盤にただ寝ころんでいてもいい。北欧スタイルのサウナである、湿度が高いトロピカルサウナ（約80度）とややドライなフィンランド式サウナ（約85度）にも興味をそそられる。天井いっぱいに設置してある小さな照明のきらめきは、霧が漂う夜空にまたたく星を連想させる。その間をゆっくり動く人々のシルエットを見ていると、まるで映画のワンシーンのようで、夢見心地になる。

プライベートな時間と場所をコンセプトにした静かなスパの雰囲気に飽きたというなら、バスハウスを提案したい。恋人、友人と一緒に、あるいは小グループで、ウェルビーイングとソーシャライジングを同時に楽しめる空間だからだ。笑い声と対話が、ほかにはない「スパミュージック」を奏でる。
週末のソーシャライジングを計画するなら、自然採光になった1階のレストランでのヘルシーな食事で一日を始め、午後いっぱいスパでくつろぐコースはどうか。シェフのノスタルジアが伝わってくるスカンジナビア料理など、北欧の自然食メニューがここの看板。食事だけの一般客も利用できる。スパの利用客はいつでも自由にレストランに出入りできる。スパの途中でローブだけ羽織ってさっと上に行き、ボタニカルとウオツカを使ったハウスカクテルで喉の渇きを潤すのもおすすめだ。

予約　ウェブサイトでの予約が必須。平日と週末、時間によって価格設定が異なるが、レストラン利用を含めたパッケージ商品がある。スクラブ、ストレッチなどトリートメントルームでのサービスも事前に選択できる。退出時間は自由だが、ロッカールームの数が限られているため、午前早めに行くのもいいだろう。
準備するもの　水着を必ず用意すること。環境を害するような泥パックやオイリーな製品は控えよう。岩盤浴をしながらお手入れするための軽いマスクパック程度ならかまわない。カメラとデジタル機器の持ち込みは不可。
エチケット　街中のブティック型スパのため、規模は大きくない。一つの施設を長時間独り占めしないように。

ロッテニューヨークパレスは19世紀末に建てられた資本家ヘンリー・ビラードのマンションと、55階建ての近代式なタワーが共存するホテルだ。米ドラマ「ゴシップガール」をはじめ、いくつもの映画に登場し、ニューヨーク旅行の必須コースとなっている。客室は全909室。15世紀のイタリアの大聖堂をモチーフにした美しい庭園があり、レストランビラードや高級サロンのレアリティーズ、カクテルバーのトラブルズ・トラストなど、レストランとバーもそろっている。
住所　455 Madison Avenue at 50th Street, New York
電話　+1-800-804-7035 
ホームページ　www.lottenypalace.com